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6話 結婚式と初夜

 フリッツとの結婚式は盛大に行われた。


 家族一同集まり王都の中央教会での挙式となった。

 参列者は軍関係者まみれだったが、それはしょうがない事だ。


 そして一つだけ騒ぎがあった。ハンス・フォン・フェルストが乗り込んできたのだ。私の結婚など認めないという話だが、私とよりを戻したいと言いたかったようだ。


 彼は家を追い出されることまではなかったが廃嫡され、フェルスト家は分家筋から養子をもらう形となった。私と結婚すれば再度伯爵になれる道があると考えていたようだ。

 すでに法的に家督相続権を失った人間が、元婚約者と復縁したからと元の鞘に収まるわけがないのだが、それすら分かっていなかったという事だ。


 それに、今や部外者となった貴族令息がとやかく言ったところで侯爵家の結婚を覆せるわけがない。

 当然、大声を上げたところで参列者の軍人たちにつまみ出されどこかへ消えた。


「別に殺しはしない」

「ならいいわ。あれが見納めなんて寝覚めが悪いもの」


 そんな一幕を挟みつつも式は無事に終わり、披露宴もつつがなく進んだ。

 侯爵家タウンハウスの大きな庭で行われた披露宴の片隅に、T-1がポツンと置かれていたことは笑ってしまった。

 ポツンというには十分な大きさがあり参加した軍人たちは興味津々だった。


 無事披露宴も終わり、私とフリッツ二人だけの時間がやってきた。

 寄り添うようにソファーに座りローテーブルに置かれたワイングラスを口にする。

 披露宴でも配られていたスパークリングワインで度数は低そうだ。


「ずいぶん落ち着いているな」

「こういうことはあわててもしょうがない事ですので。それにフリッツはご経験済みでしょう? 心配しておりませんの」

「君は初めてのはずだが?」

「えぇ初めてです。ですから、多少緊張していますが……体がこわばるとよくないと聞いていますから」

「そうか……結婚した後の儀式のようなものだと思っておけばいい。可能な限り痛くはしない」

「いいえ、せっかくですから楽しませていただきますわ」


 そういって私はフリッツにキスをし舌を絡める。

 前世の記憶としてどうすると男が喜ぶのかは理解しているし、その行為が興奮することであることもわかっていた。

 唇を離すと驚いた顔のフリッツがいて、してやったりと思う。


「君はずいぶん大胆なのだな」

「これでも伯爵令嬢でしたので」

「答えになっていない気がするが……」


 彼の言葉を途中でふさぎ、体に手を添わせると腰を抱かれてひょいと持ち上げらてしまった。


「そこまでされては、答えないわけにはいかないな」


 そのままベッドに連れていかれ、私は初めてを散らした。

 さすが子持ちだけありフリッツは慣れていたと思う。それほど痛い思いをせずに済んだし、私がやろうとしたことを理解して動いてくれた。

 実際、一度目は痛みが強かったが、二度目はなかなか気持ちが良かった。

 彼も乱れた私の姿はなかなか興奮したようだ。


 初夜を終え、数日フリッツは休みのため私と提案する戦略・戦術についてのすり合わせを行った。


 それまでも何度か行っていた事ではあるが、軍に対して正しく説明するのはフリッツになる。

 とはいえ、頭がいいフリッツは私が言ったことをさらに発展させ、より王国軍の実情に合わせた形に変えていた。それによって、現状私たちが主導して作ったT-1はひとまずほしい性能を十分有していると判断されていた。


「これから試作車としてもう何両かT-1を作り、演習評価する。その間にほかに必要となる兵器をつくってくれ。戦車に帯同する兵員輸送車、補給物資運搬の為の車両、随伴歩兵用の装備、いくらでもあるだろ?」

「T-1の足回りを応用すれば兵員輸送車も物資運搬車もすぐに作れるようになるわ。必要なのは魔力の安定供給、後はT-1を正面から撃破できる砲、敵歩兵を足止めできる機関銃、確かにいっぱいあるわ」

「特に物資輸送の車両は早急に欲しい、食糧は現地徴用できても砲弾は運ぶ必要がある。馬車ではついていけない」

「建設が始まった王都から直轄領までの鉄道輸送の活用も考えて、いくら輸送車があってもそれだけで必要な物資、補充の兵、食糧すべてを運ぶには大量の輸送車両が必要になってしまうし魔力も無駄よ。戦場近くまで鉄道を引く、それが重要になる」

「鉄道か、確かにその輸送力は目を見張るものがあるな」


 そんな会話をしながら二人だけの朝食をとる。

 夜は色気たっぷりだったが、今はそんなものみじんもなく、完全に仕事の話だ。

 朝食を食べ終えたフリッツがふーっと溜息を吐く。


「キャロルは若いのだから、もう少し甘えてくれてもいいんだぞ?」

「夜たっぷり甘えさせていただきました」

「そうではなくてだな」

「わかっていますよ。せっかく結婚し夫婦になったのですから若い妻に甘えてほしいのでしょう?」

「わかっててその態度か、キャロルらしいが」

「ふふふ」


 もしかすると私は悪女なのかもしれない。

 とはいえ、こうして二人だけで過ごす朝食とその会話というのもなかなか乙なものだと思う。

 私からすれば趣味の延長に当たる会話でしかないからだ。

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朝と夜の温度差で風邪ひきそう
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