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転生令嬢は戦車を作りたい  作者: シャチ


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15/20

15話 開戦

 プロイス帝国のポスポリタへの宣戦布告は回答期日を超えたと同時に発令された。

 同時にバーデン王国とデュッセル王国はプロイス帝国へ宣戦布告し、プロイス帝国は二正面戦争を強いられることになる。

 馬鹿正直に宣戦布告しないで取り下げればいいものを前日に三か国の軍事同盟の発表を行ったにもかかわらず戦争を強行したわけだ。


「まさか本当に宣戦布告するとは思いませんでしたわ」

「そうよね、我々をなめているのかしら?」

「ずいぶん冷静ですね母上もケイト嬢も」


 翌朝、朝一番でフリッツは軍令部へ行き、代わりにカロリーネ嬢が我が家にやってきた。

 メンクレバー公爵家にいなくてよいのかと聞いたら、好きにしろとのことでこちらへ来たらしい。

 まぁ王都は安全だろうからどこにいてもあまり関係はないかもしれないが。

 そして、私たちの目の前にはバーデン王国を中心に周辺各国の地図が置いてある。

 最近導入されたラジオ放送を聞きながら、時折かかってくる電話にて最新の情報を得てコマを動かしていく。


「やはりクロイツァー(シュリーフェン)プランでしたねキャロル様」

「予測されていたとはいえ、ポスポリタをなめていると言えるわね。こちらの相手をしている間に背後から刺されるわよ」


 フリッツが気を利かせて若い士官の一人を我が家につけてくれたおかげで時間差はあるだろうが大体の戦線の動きが見えてきた。

 我が国もすでに総動員令がかかり、平民への徴兵や貴族家での人工魔石製造の援助など要求が出ている。

 私たちも目の前に置かれた人工魔石にチマチマと魔力を込めながら、各軍の動きを追っている状態だ。


「東部方面軍第三師団の機甲部隊が戦闘に入りました」

「敵側はどの部隊か判明しているの?」

「航空偵察撃破した敵Mk-Ⅳ戦車のエンブレムから西部方面軍第26軍団とのことです。戦闘は継続中とのこと」


 若い士官が電話で得た情報を伝えてくれる。

 フリッツの計らいはとても助かる。

 自分が盤面を動かせるわけではないけれど、戦況がわかるというのはかなり安心できるものだ。


「西部方面26軍ということは、向こうは第一師団でしょうね」

「キャロル様、戦闘継続中で国境付近というと、この辺りが突破可能エリアになっていませんか?」

「……そうね。少尉さん、現在この地域に展開している部隊はありますの?」

「第三師団の管轄とは思いますが、すでに戦車は別方面で待ち伏せをしております」

「ロベルト、すぐにフリッツ様につないで。下手を打つとズルツァー辺境伯領を抜かれて第三師団が背後を取られるわ」

「わかりました奥様」


 私の指示で執事のロベルトが駆けて行った。

 この布陣なら第三師団から引き抜くより、後方にいる中部方面軍の第五師団あたりを前進させたほうがいいだろう。


「きっとあの辺りは黒き森(シュバルツヴァルト)ですから軍も見落としがあったのでは?」

「いえ、よく考えればズルツァー辺境伯はT-1B2をお持ちで自営兵力もあるから王国軍が手出しをしなくてもよいと思ったのでしょう。ですが、たぶん抜かれますわ。先ほどMk-Ⅳ戦車を撃破という事は、06式じゃないと相手にならないわよ。奇襲戦法で多少は抑えられるでしょうけど、森を抜けられたら辺境伯の戦力だけでは持たないわ」


 そう、各辺境伯には王国軍とは別にT-1A2の再改良型T-1B2が配備されている。

 魔物撃破を主目的としており、20mm機関砲を装備し、搭乗兵員を2名と減らした代わりに多少重装甲化したものだ。

 運用の煩雑さはあるが、対魔物では無類の強さを持つ。

 何より車体サイズをそのままに魔道エンジンを大型化したため最高速度は50km/hに達する。

 軽戦車としては優秀だが、相手が中戦車の群れとなるとやはり厳しいものがある。


「奥様、フリッツ様より感謝するとのことです」

「向こうでも気が付いたのでしょう。よかったですわ」


 ロベルトの後に若い士官が入ってきて最新の情報をくれる。

「報告です、第1から第6までの航空隊は上空を確保、敵戦闘機と攻撃機の撃破を続けているとのことです。すでに100機以上の敵航空機を撃墜したと連絡が入っています」

「F-3とF-4の真価が問われますが……たぶん落とせたのは20機もないでしょうね」

「航空機の撃破報告ほどあてにならない物はないですものね」


 往々にして飛行機の撃破数はカウントミスなどによって無駄に増えやすい。

 まだ無線の性能もよくないため正しい数はそれぞれ戻ってきた飛行機の記録ですり合わせない限り正しい数字にはならないだろう。


「士官さん、うちの飛行機で撃破数の連絡は?」

「まだありません」

「まぁ基地に戻ってこないとわからないでしょうね」


 ケイト嬢は椅子に腰かけて溜息を吐き、また魔石に魔力をため始める。

 さすが公爵令嬢ね、楽々入れている。

 私は苦手なのよねこれ。

 とはいえ、私の戦車がすべてきっちり戦えるように手を抜くつもりはない。

 しばらくはこんな日が続くのでしょうね。

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