表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生令嬢は戦車を作りたい  作者: シャチ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/20

12話 お茶会

 観閲式から数日、寝返りを始めた娘リーサは元気に伸びをしたり縮んでみたりと体を動かしているのを乳母やメイド見守りながら白湯を飲んでいると、家令が手紙を持ってきた。

 いつもであれば私の執務室に置いておくであろう手紙をわざわざ持ってきたという事は、かなり重要な手紙だという事だ。


「奥様、メクレンバー公爵家よりお手紙です」

「公爵閣下からですか、誰ぞ、ペーパーナイフを」


 メイドの一人からナイフを受け取り私が開ける。

 普通の手紙ならメイドに開けさせるが、公爵家からの手紙であれば私が直接封を切るべきだ。

 中からは2通の手紙が出てきた。

 一通はカール・フォン・メクレンバー公爵から、もう一通はカタリーナ・フォン・メクレンバー公爵令嬢からだった。

 公爵閣下からは、陸戦兵器開発の協力に関する感謝がしたためられていた。

 05式も06式も私の名前が筆頭に挙がっている。しかしそれだけでわざわざ手紙を送ってくるとは思えない。

 最後まで読むと、娘が私に会いたがっているので、ぜひ来てほしいと書かれていた。

 このタイミングで手紙が来るという事は、リーサがある程度落ちつくまで待っていてくれたのだろう。

 

 そしてもう一通、カタリーナ公爵令嬢の手紙は、ご令嬢の手紙とは思えない内容が記されていた。

 

 ”陸軍内における兵器開発についてぜひ一度すり合わせを行いたい。”


 要約すればこんなところだ。

 それは軍人がやることだろうと思うが、彼女は戦車開発の第一人者となっている私と、直接会話がしたいと言ってきたのだ。


「カタリーナ嬢についての情報を頂戴。銀髪の可憐なお嬢様だったことは記憶しているわ」

「カタリーナ公爵令嬢は、陸軍航空隊でF-3戦闘攻撃機の設計をされたとお噂があります。なんども陸軍内で目撃情報もあり、飛行試験には必ず参加されているご様子です」


 家令に確認すると意外な言葉が返ってきたが、納得もした。

 彼女か、空の兵器を発展させているのは。

 それは会いたいと言ってくるだろう。いきなり軍の正式採用された軍用機がP-47に似ていることを考えても、私と同じタイプの人間だ。


「わかったわ、すぐ返事を書きます」


 私の言葉にメイドたちが便箋セットを持ってくる。

 早いうちにあったほうがいいだろう。きっと向こうも早く会いたかったはずだ。


******

 手紙を返してから一週間後、私はエイミーとドロテアを引き連れメクレンバー公爵家を訪れた。

 馬車が到着するのをすでに待ってくれていたようだ。公爵令嬢にしてはずいぶんと腰が低い。

 前世の記憶があればそうもなるかもしれないなと内心で思う。


「お待ちしておりましたシュミット侯爵夫人、お会いできるのを楽しみにしておりました」

「お久しぶりでございますメクレンバー公爵令嬢、2年前の王城での夜会以来でございますわね」


 挨拶をかわし、中庭の見える部屋に案内される。

 すでに茶菓子が用意され、準備万端なようだ。


「シュミット様におかれましては、戦車をはじめとする陸戦兵器の開発を主導されているとお聞きしてぜひ一度話をしてみたいと思っておりましたの」

「私は最近メクレンバー公爵令嬢が我が国の航空機開発に携わっていると聞き、大変興味を持っておりましたの。とても良い機会でしたわ」


 話は穏やかに始まった。

 そして話を聞くと、公爵令嬢はずいぶんと幼少期から飛行機開発を秘密裏に行っていたようだ。

 どうも、公爵から公にするなとくぎを刺されていたらしく、世界初の飛行を逃してしまったと悔しそうにしていた。


「それで、後追いであるはずの我が国の航空機がいきなり先進的なデザインでしたのね」

「あれを見て、本当に先進的と思われましたか?」

「えぇ、この時代にしてはずいぶんと先をいかれたものかと……」

「06式戦車、はじめて見たときはこの時代にT-55が現れたのかと私も戦慄いたしましたの」


 一瞬の沈黙、二人で目線を合わせジェスチャーでメイドたちを下がらせる。

 部屋には私と公爵令嬢だけとなる。


「シュミット夫人、私のことはケイトとお呼びください」

「では、私のこともキャロルと、前世持ちの好ですわ」

「えぇ、今ではこうしてお嬢様をしていますが、私が生まれたときは美少女に生まれてしまったものだと恐れおののいたものです。キャロル様もさぞ驚かれ今まで生活してきたのでしょう?しかも結婚して子供までいるなんて……」

「お待ちくださいな。私は16で初めて前世の記憶の一部を思い出しただけで、幼少期に前世の知識は持っておりませんわ」


 私の答えに、ケイト様がぴたりと止まる。

 どうやら彼女は生まれたときから前世の記憶があるようだ。

 私は偶然、婚約者の浮気ととんでもない発言に前世を思い出した形だ。


「そ、そうなのですか……私は生まれたときから前世の記憶がありまして、前世の名前も憶えているのです。このナーロッパのような世界に生まれ混乱したものですが……キャロル様は違うので?」

「はい、ケイト様とは違うようですわね。ですが現世ではない知識を持っていることは間違いありませんの」

「あれだけの戦車をおつくりになられるのだからそうでしょうね……」


 その後、いろいろな話をした。

 航空機に対する防御は航空機でするのが最適解であることや、その際戦車はどう身を守るべきか、逆に戦車を確実に葬るための航空機ですとか、国防についての話し合いというとても令嬢と夫人が話す会話ではない会話をして、お茶会がお開きとなりました。

 その中で、魔道エンジンの共通化と効率化、魔力チャージに関する研究の促進について協力する取り決めも行いました。

 後日正式に文書に残すという事になりますが、今回のお茶会はかなり良い結果をもたらしたでしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ