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第九話:二日目〜四日目

〜翌朝〜

「ぅぅん……」

朝の匂いを感じてオレは目を覚ました。

鼻がある程度利くのは、生きる上でかなり助かっている。

(おはよう)

起きてまずすることは今日の進捗のおおまかな設定。終わりから考えて逆算するのは人生において常識である。昨日は早めに進行を切り上げたしさっさと進むか。(とりあえず、まずは水だな)

「生活魔法『飲料水(ミネラルウォーター)』」

手で器をつくり、そう詠唱すると水が魔力によって精製される。さすが“生”きる“活”動の魔法。【生活魔法】に感謝をして、水を飲む。これから先もお世話になることだろう。現在地を確認するため便利地図を開きながら歩く。最短距離の道からあまり外れていないことと、思った以上に距離を進めていることが分かった。魔法による速度と体力の強化がかなりいい仕事をしている。これなら命を大事にしつつ、予想通りの時間で着けるだろう。気合い入れのためにも強めに魔法をかける。

(魔獣を群れで倒したおかげで魔力結晶による魔力補充もできるし、荷物を多くしないためにも思い切って使うのがいいよな)

「『タフハート』『ウォークアップ』」

昨日より多めに魔力を練って魔法の持続時間を増やす。魔力結晶を砕いて魔力を得る。本当は木っ端微塵にしてすり潰して水に溶かした魔力水を飲む方がいいのだが、そこまでできる道具は今はないし、持ってきた魔力水はダンジョンに到着してから使いたい。

(アイツと二人で魔力結晶をそのまま飲もうとして母さんに全力で止められたことがあったな。刺激が強すぎて体が耐えれないからやめなさいって。それなりに記憶に新しいから、多分まだ耐えれない気がする。ダンジョンに着いたらイアンにいけそうか聞いてみるか)

[目的地までおよそ80時間です]

そうしてオレはまた長い道のりを歩き出した。いくら広大とはいえ、森であることに変わりはなく、特に昨日とやることも変わらなかった。昼過ぎに川が流れている所を見つけ、魚を取って保存する。ちょうどいいとオレは体とついでに装備を洗うことにした。森の匂いが取れるかもしれないが、どうせすぐに付く。【生活魔法】のようにはいかない、だが汗で粘っていたのはとれた。

「生活魔法『乾燥(ドライヤー)』」

これは時短のために【生活魔法】を使う。急ぎの洗濯を【生活魔法】でしようとすると、魔力消費が中々に凄い。だから自分で洗って、乾燥だけ魔法を使うのだ。ついでに“あれ”もしておくか。

「生活魔法『有機還元(オーガ・リダクション)』」

ゾワゾワと身体に悪寒が走り、脚を伝って地面に魔力が流れていく。数分待つと悪寒がなくなり、スッキリとした気持ちになった。生活に必要な排出の魔法とはいえ、やはりこの悪寒はいつまでも慣れない。

(アイツに魔法の最中に触れられたときは妙な気分だったな。変に感覚が鋭くなっていたような……)

[目的地までおよそ73時間です]

そしてまた長い道のりを進む。道中は特に問題が起こることもなく、夜も寝床と食料を確保できた。この先も今日くらい平和だといい。

(おやすみ)

〜2日後〜

あれから2日が経った。かなり進んでいて、地図を見てもダンジョンに近づいていることが分かる。最初はふざけんなこんな所行けるわけねえだろとか思ったが、案外ここまで来ると行けるんじゃないかと思えてくる。オレもイカれた奴と関わってきた影響と、歩き続けた疲労で頭がおかしくなったのかもしれない。

[目的地までおよそ29時間です]

今日もまた長い道のりを進む。このペースならあと2日もすればダンジョンに着くだろう。だが順調なときほど異質な状況は訪れるもの、慎重に道を進めないと。といっても、午前中はあまり変わらない道中であった。やはり魔獣が活発になる夜が一番何が起こるか分からない。もうここまで来るとというか2日目以降、未知の魔獣などが現れなかったのが奇跡だ。多種の生物に出会ってきたが、父さんに森に生息するものたちを叩き込まれたおかげで対処も間違えずにいれている。

(知識ってのはこんなにも役に立つんだな。アイツは大丈夫なんだろうか。オレの中のお前はオレと一緒にバカやってた記憶ばっかりだよ)

今まで通り昼ご飯を済ませて、装備と持ち物、地図を再確認する。すると地図から少し嫌な音がする。その後、音声が流れた。

[現在、便利地図の使用に必要な魔力が減っています。すぐに魔力補充を行って下さい。繰り返します。現在、便利地図の使用に必要な魔力が減っています。すぐに魔力補充を行って下さい]

便利地図の魔力が切れかけている。基本的に魔具は魔具自身の魔力のある限りしか使えないが、これは違うらしい。

「魔力補充?どうすればいいんだ?」 

まだ機能している内に方法を聞き出す。

[魔力補充は付近での魔力結晶によって行います]

どうやら随分簡単な条件らしい。荷物カバンから、魔力結晶を取り出し地図の上に置く。すると便利地図が光り、魔力結晶を吸収した。

[魔力結晶の吸収を確認。残り使用可能時間10時間。目的地までおよそ21時間です]

かなり高性能だからか、少し補充した程度では足りないらしい。もう一つ魔力結晶を取り出し、地図に吸収させる。

[魔力結晶の吸収を確認。残り使用可能時間14時間。目的地までおよそ21時間です]

あまり使用可能時間が伸びてないが、今はこれくらいでいいだろう。気を取り直して地図を見る。相変わらず森を突っ切るルートのままだ。だが、今までより明らかに距離が短くなっていることが分かる。こんなふうに距離の変化が見れるとここまで来たのかとゴールでもないのにそう思えてしまう。

(あてのない道のりだったはずなのに、精神が壊れずにいれるのはこれのおかげだな。アイツはどうだろうか。アイツの話をそのまま信じるのならば、元々オレたちのところへ来たときはこれ以上の長い道を走っていたはずだ。その地点ですでに狂っていてもおかしくなかったし、実際アイツと初めて会ったときは生きているかどうかさえ怪しかった。家を出ていく前のアイツもどこかおかしかった……無事であることを祈り続けるのは、怖いな)

余裕ができたからか、少し考え事をしてしまった。それが、よくなかった。ダンッと地を強く蹴る音が聞こえ、オレは咄嗟に横に跳んだが、右肩に激痛が走り咄嗟に押さえる。

「ぐっ!?」

どうやらはぐれ狼が襲ってきたらしい。群れではなかったため、すぐの追撃はされなかったが、完全にオレを獲物としてロックオンしており、トドメの刺し方を模索しているようだ。

(迂闊だった……!だがこういうときこそ冷静に、分析を。あの狼は魔生物でも魔獣でもない)

魔力を扱うことに長けていない動物は、魔法の防御の突破手段に乏しい。

「【風魔法】『風の盾』」

故に一時しのぎはしやすい、はずだった。

「『ウオオォン!』」

ブォッ!

「っ!?がっ!?」

ダンッ!ドサッ

「グウウウウ……ガゥッ!」

「させるかっ!」

グザッ!

「ギャアッ!?」

狼の顎にナイフを突き刺すと、血がビシャリとオレに掛かる。狼は腕をダランと降ろしており、完全に絶命していることが分かった。

「はっ、はっ、はぁっ……はぁ……」

(し、死ぬかと思った……)

まさか『風の盾』を壊されるとは。見た目は完全に狼だし、今も死体が魔力結晶に変わってもいない。生態を見る限り魔獣でもないだろうが、魔生物かと言われるとそれはそれであまりに特徴がない。

(まだまだ知らないことばかりだ。アイツなら……いや、考えたら駄目だな。また襲われる隙を見せることになる)

現実を意識し直して、まずは自分の傷を処置する。死体は必要最低限の肉を削ぎ、それ以外は放置してその場を後にする。日が沈み始めた時、明らかに魔獣や動物を見つける回数が増えた。魔生物が通り過ぎることもあり、安全確保を怠れば眠れない一日が訪れることを予感して地図を見る。しかし辺りに魔獣の巣はないようで、寝床になりそうな場所がない。せめて横になって目を閉じれる場所に行こうと思い、木の下で呪文を唱える。

「【土魔法】『落とし穴』」

大人が一人入る程度の穴を作り、そこに弓矢と短剣以外の荷物を放り込み穴を塞ぐ。そのまま木の上に登って、周囲を警戒しながら目を休める。

(頼むから何も起こらないでくれ……)

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