第四話:ダンジョンという存在
「だ……ダンジョン」
オレはその単語に少しばかり身構える。なぜならダンジョンは多くの冒険者たちを死に追いやった魅惑の死に場所だと言われているからだ。そんなオレを見てか、イアンが口を開く。
「大丈夫!俺がレネードを死なせないよ」
「イアン……」
イアンの顔の良さと勇者という実績にオレはすっかり安心した。
「じゃあまずはどうやってダンジョンを攻略するか話すね。また長くなるけどまあ気長に聞いていて」
そしてまたイアンが話すことには
[ダンジョンについて]
・ダンジョンは魔力がどこかに異常かつ大量に集まることで出現する。その場所の性質や生物の特徴によってダンジョンは形成される
・ダンジョンはダンジョン外の魔力を集める
・ダンジョンには魔力が集まっているため、魔獣が多数出現する。形成されたダンジョンに合ったものが多い
・中は異次元空間となっており、基本は最奥の部屋からしか抜け出すことはできないが、階層が多くある大規模ダンジョンなどは途中離脱なども可能な場合がある
・ダンジョン最奥の部屋にはボスと呼ばれる大きな力を持った魔獣がいて、ダンジョンの中核となっている
・ボスを倒すと報酬が現れ、同時にダンジョン内部の魔力が霧散し、魔獣もダンジョン内から消える
・攻略されたダンジョンは長い時間をかけて消滅していく
長え……魔物と魔者の説明合わせた分くらい長くねえか?
「長すぎるからまたメモ書いとくね」
オレのウンザリした顔を見て察したのか、イアンはまたメモを書いてくれた。オレは渡されたメモを読みながらイアンに質問する。
「つまりまずはダンジョン探しからか……長い道のりになりそうだ」
思わずため息をつきそうになったが、イアンが都合のいいことを言った。
「ダンジョンなら見つけているよ。それもここからそう遠くない場所に、ね」
ほんとうになんて都合のいい……しかし、こういう場面をスキップできるのはやっぱり強いな。
(そういやガキの頃、アイツもこんなふうに先回りして森の探検とか楽にしてくれてたな。あ、でも母さんたちに一人で行くなんて危ないとか怒られてたっけ。そのままオレも森に二人だけで行くなんてとか説教されたなあ)
だんだん回想が長くなってる気がしなくもないが、イアンはオレがそんなことを考えてるとは知らずサクサク話を進めていく。
「だからまずはダンジョンの周囲を調べよう。そのメモに書いてあるとおり、ダンジョンは周囲の環境から傾向を理解することができるからね」
かろうじてその話を聞いていたオレは今の時間をサッと確認して返事をする。
「あぁ、了解だ。だがその前に腹を満たしてからにしないか?この荷物もあるしな」
オレは机の横に置いておいた襲撃者たちの凶器を入れた袋と今日狩った獲物を入れた袋を指す。
「もしかして作ってくれるの?」
顔の良いイアンの期待を寄せた目を見て、少し誇らしくなりながらオレは言った。
「あぁ、狩人たるもの自炊は基本だ。そして『狩人の心得』には、"客人はどういう形であれもてなせ"とあるからな。それなりに時間がかかるから、オレが、呼ぶまで好きにしていていいぞ」
『狩人の心得』には狩人としてのマナーなどが書かれている。オレの父さんが書いたものだ。これをガキの頃から読み聞かせられていたオレは、もう内容を暗記できるほどになっている。それはオレの一つの自慢なのだ。
(そういや父さんから聞いたのをオレがアイツに教えていたな。アイツがキラキラした顔で聞いてきて、一緒に言い合うのが楽しかった)
いつもより機嫌が良くなったオレは、軽い足取りで裏口から外に出た。
イアンの話した内容メモ
[ダンジョンについて]
・ダンジョンは魔力がどこかに異常かつ大量に集まることで出現する。その場所の性質や生物の特徴によってダンジョンは形成される
・ダンジョンはダンジョン外の魔力を集める
・ダンジョンには魔力が集まっているため、魔獣が多数出現する。形成されたダンジョンに合ったものが多い
・中は異次元空間となっており、基本は最奥の部屋からしか抜け出すことはできないが、階層が多くある大規模ダンジョンなどは途中離脱なども可能な場合がある
・ダンジョン最奥の部屋にはボスと呼ばれる大きな力を持った魔獣がいて、ダンジョンの中核となっている
・ボスを倒すと報酬が現れ、同時にダンジョン内部の魔力が霧散し、魔獣もダンジョン内から消える
・攻略されたダンジョンは長い時間をかけて消滅していく