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第二話:談話と"お願い"

解体も終わり、オレは家に向かうことにした。木の上に跳び上がると、目の前に映るのは濃い緑が映える葉が広大に隙間なく茂る景色。しかしオレはその奥にうっすらと見える黄緑色の草原に目を向けた。木から木へと跳び渡って行き、森と草原の境目に近づくと、一歩大きく跳び上がる。そうしてオレは森を抜け、森のそばに佇む木造建築たちの内一つの前へ、風を起こしてふわりと着地した。一息つくと同時にオレの隣で光が弾けた。

「へぇ~ここが君の家なんだ」

「そうだ、入ってくれ」

オレはそう言って勇者に入るよう促す。すると勇者は不思議そうにオレに言った。

「あれっ?反応ないの?」

「何についてだ?」

そう返すと勇者はなぜか困ったような顔をされた。オレが何かしたか?反応と言われても……あぁ、そういうことか。

「反応とは今の光の瞬間移動のことか?別に反応するほどのものでもないだろう。最初にあんたが見せた高速移動と同じだろ?」

(アイツの力も似たようなものだしな)

ふとオレはアイツを思い出す。今日はよくアイツが頭の中に出てくるな。

「そうだけどぉ、これしたら大抵の人は驚くのに……もしかして、狩人くんこういうの慣れてる?」

勇者は間の抜けた声でオレに聞き返す。声色とは裏腹に、やけに確信を突いた質問だ……適当に返すか。

「……まあ、それもあるかもな。それよりも入れ。"お願い"とやらがあるんだろ?」

オレは家の扉を開ける。

「そうだね。ではお邪魔します」

家の中に入ってすぐに見えるのは狭い通路だ。

「この通路の奥右がトイレだ。手前は階段、上が宿泊部屋だ。この家は木造だが、雨漏りはしないから問題ない」

オレは淡々と家の説明をしていく。

「家に入って左手側が居間だ。ここはキッチンと冷蔵庫、イスとテーブル、裏口がある。まあ、居住スペースはこれくらいだ。分かんねえとこはあるか?」

説明も終わり、オレは勇者に問いかける。すると勇者はジトリとこちらを見つつ返答してきた。

「気になることはいっぱいあるんだけど」

「なにが気になるんだ?」

一般的な木造建築で気になることなんてあるのかと思いつつオレは勇者に聞く。

「とりあえず……なんで二階建て?一人暮らしなんでしょ?そんなにスペースいらないと思うんだけど」

あぁ、そんなことか。細かいところを気にするんだな、勇者ってのは。

「囲まれたときの対策だよ。上から撃った方が良いのは分かんだろ。そのくらいしか気にならないんなら、さっさと本題に入るぞ。そこ座っててくれ、今茶を入れる」

オレは半ば呆れつつ答えを返し、茶の準備を始める。丁寧に、素早く。しかし、時間の管理はキッチリと。ざっと3分ほどでお茶が完成した。勇者の前に湯呑みを置き、オレもイスに座って一言伝える。

「口に合うかは知らないが、飲みやすいはずだ、」 

オレがガキの頃から母さんに飲ませて貰ってた茶だから、まさか大人の勇者が飲めないなんてことはないと思うが。

(苦いのが苦手だったアイツも、この茶は苦くないって言って美味そうに飲んでたな)

またアイツを思い出してしまった。もう今日はそういう日なんだろう。いちいち意識しても仕方ない。お茶を飲みつつ無駄な回想に浸っている間に、先に一息ついた勇者が喋りだす。

「じゃあさっそく本題に……と思ったけど、自己紹介からかな」

そういえば、とオレも名前を言っていなかった事を思い出した。勇者は続けて名乗った。

「先に俺から言うね。改めまして、今世紀の勇者イアンです。持ち武器は弓矢が基本かな。剣とかも使えるよ」

どうやら名前はイアンというらしい。武器を複数扱えるというのはさすが勇者といったところか。とりあえずオレも名乗り返す。

「オレはレネード。武器は弓矢だ。短剣はあまり使えない」

最低限の情報でいいだろう。まだ何を言われるかも分かっちゃいないんだ。

「ではお互いに名乗りあったわけだし、本題に入ろう。先にレネードがあれをしない方法から教えるね」

それはありがたい。やはり勇者というだけあって他者の利益を優先できるのだろうか。あまり他者と関わってこなかったから腹のうちの探り合いというのは難しい。まあイアンは勇者だ。そういうことは考えず、シンプルに言葉そのままを受け止めていいだろう。そんなふうに思考をまとめて、オレはイアンに続きを促す。

「俺はレネードのお母さんを狙ってる組織とその根城を知っている」

「どこだ教えてくれ」

オレは思わず前のめりにイアンを問い詰めた。根城があるならそこを潰せば母さんを狙う奴らを国か何かに突き出せばいい。そうすればきっと……!

「慌てないで。言った通り相手は組織だ。生半可な力じゃ勝てないし、それに根城というだけあって、距離もここからとても離れているんだ。君のところに行くにはなにかワープの魔法を使っているようだけどね」

それを聞いてオレはうなだれた。しかしそれならオレはどうすれば母さんを救える?不安と期待を込めてオレはイアンを見た。

「そこで"お願い"だ。レネード、俺の勇者パーティーの一員になってくれ!」

「…………は?」

それを聞いてオレは思わずマヌケな声を出してしまった。だがしかし、そうなるのもしょうがないじゃないか。だって、オレが、勇者パーティーの一員!?

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