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ダンジョン攻略:中編

毒の花が現れ周囲の様相も変わったものの、道に生えている赤い花は少なくなっているという予想はあながち間違っていなかったようで、あまり赤い花は見られず、ダンジョンからの動きも無く、静かな探索が続いた。たまに脇道も見えたが、イアンいわく基本道を変えずに進んでいけば最速でボスへ行けるとのこと。

『今回の目的は1人でボスを倒すことだし、このダンジョンは中にボスを倒すために必要な魔具があるわけじゃなさそうだし、ダンジョンをくまなく探すとかそういうのは他の人達がやりたがるだろうからしなくていいよ。あ、したかったらもちろんしてもいいと思うよ!宝箱を見つけて開けるときのあの快感……1度味わうと中々抜け出せなくなるんだよね〜』

後半はともかく前半は結構重要なことを言っていた。特別な魔具が無いということは、逆に言えば実力で勝負するしかないということだ。元々そのつもりではあったものの幸運に助けられることも無いというのは、初めての挑戦に対する仕打ちとしては随分と酷くないかと一瞬思ったがそもそもこうなったのは初ダンジョンを1人で攻略しろとか言ってくる勇者のせいだった。

(やっぱりあの勇者は狂ってるな……もうこういう無茶にも諦め慣れてしまったな……)

その時ちょうど魔獣が現れ、ちょうどいいとやり場がなく見ぬふりをするしか無かった怒りを込めて弓矢を放った。いつもより力が入ったからか、()()()()()()()()()だったからか、矢は魔獣の体を貫いて地面へと落ちていき

(っ!?しまった、赤い花がっ)

花粉が舞い上がり、同時にゴブリン型の魔獣と、さっき射ち抜いた鳥型の魔獣が湧き出てきた。咄嗟に隠れたのと、少し離れていたおかげで、すぐには気づかれず鳥型の魔獣はどこかへ飛び去っていった。だがゴブリン型の魔獣は歩き回ってオレを探しているようで、そのせいで紫の花からも花粉が放たれ、状況はどんどん悪くなっていく。このままでは先に進むのは難しいと考えていた頃、何匹かの魔獣が突如苦しみだしたかと思ったら、倒れて魔結晶に変わってしまった。やはりあの紫の花の花粉には毒があり、更にあの魔獣には耐性がないことが分かった。しかしこのままでは魔獣が全て死ぬより先に花粉がオレのいる所まで来てしまうだろう。対策のためにハンカチで口元を覆い、限界まで待つ。

(ここだっ!)

「『風跳』」

目前まで漂ってきたのを皮切りに、勢いよく跳躍して魔獣を大きく飛び越える。

「『風纏』」

更に少しの浮遊と軽量化をして、地面に降りる時間を減らす。赤い花はオレ(侵入者)が触ることで花粉を放つため、空中にいればそれを回避できるというわけだ。魔獣たちは追いかけてくるが、今まで毒の花粉の中にいた影響でオレに追いつく前にその命を散らしていく。その魔結晶を取れないのはもったいないが、それで自分が毒に侵されては元も子もない。しばらく空中を漂っていたが、赤い花がなく毒の花粉が舞っていない場所を見つけることができ、ちょうどそこで魔法の効果も切れて、ゆっくりと降り立った。前方の様子を見ると先の道は坂がなく、魔獣も鳥のようなものが数匹いるかどうかというところで随分と穏やかだ。嵐の前の静けさとやらな気がしてならないが今はとりあえず進むしかない。それなりに長く歩いていると、目の前の霧が急速に薄れていき、ひらけた視界で見たのは、辺りを埋め尽くすどころか溢れるてしまってる程に色とりどりの花達が咲き乱れている。赤い花を踏んでしまえば出てきた魔獣たちがこの花園を荒らすだけ荒らし、様々な状態異常を撒き散らす地獄へと変わってしまうだろう。

(途中、やけに花が少ないと思ってはいたが……もはや赤を踏まなければいいという問題ではないなこれは。いったい、どうすればいいんだ……?)

安全な道筋はないかもう一度ちゃんと前を向き目を凝らすと、花園の奥に重々しい門があるのが見えた。

(あれがボス部屋の門…!イアンは見た目に反して簡単に開けるし、門で断絶されるから後ろから敵に倒されることはないと言っていたが……もし本当にそうなら、赤を直前で踏んでも囲まれはしないかもしれない)

希望が少し見えはしたが、結局は花園を越えなければならないという問題に直面する。持ち物、身の回り、門とその周囲、それぞれを見て、1つ方法が思い浮かんだ。

「……よし、やってやる」

用意するのは、鉄製で(やじり)がなく、先端が尖っている矢とワイヤー、道中に見かけた木から折られたのであろう1メートル程ある枝だ。柔らかくした地面に枝を差し込んで固め、そこにワイヤーの一端を括り付ける。もう一方を矢に結んでワイヤーの余った部分は腕に緩く巻いて準備完了だ。

「後は、矢をあそこへ飛ばすだけだな」

オレが見据えたのは門を覆うように生えている大木の左側。そこに矢を射って空中にワイヤーの道を作り『風纏』の追加効果で軽量化して渡れば、花園を踏むことなく門へ辿り着けるという算段だ。

(上手くいってくれ……!)

ビュンッ!

腕に巻いていたワイヤーがスルスルと伸びていく。

ズダァンッ!

僅か2秒後に大木に突き刺さる音が聞こえ、ワイヤーが張っているのを見て成功したことに安堵する。

「『風纏』」

あとは綱渡りをするだけだ。今までオレが狩りで鍛えてきた体幹があれば造作もない。特に妨害も無くサクサクと進み、門の前に降り立つことができた。

「これを押し開ければいいんだな」

ぐっ、と力を入れると

バァンッ!

けたたましい音と共に勢いよく門が開き、中が見えるようになる。床はもちろん、壁や天井までもあの花の咲いているツタが張り巡らされており、花たちの中には当然赤い花も紫の花もあった。目で確認できるだけでも赤と紫の花の場所を把握し、数歩進むと門は開いたときと同じような音を立てて一人でに閉じてしまった。いつの間にか霧が中央付近から流れ出ており、床は全く視認できなくなってしまった。さあどこから来ると構えて待っていると、足元から気配を察した。

「『風跳』!」

魔法を使って大きく跳躍し見下ろすと、赤い花を踏んだときの罠によく似たツタがこちらを捕らえようと飛び出していた。

(ボスの攻撃の1つだったということか。地面に居続けるは良くないな)

「『風纏』」

魔法の風による制限付きの浮遊と軽量化で地面を踏む状態を限りなく減らし、花によるトラップとボスの攻撃を避けつつボスを見つけるために全体を見渡す。しかし霧の中を動いているようには見えるものの、花に当ててしまうリスクがチラついて弓を引くのを躊躇ってしまう。

(このまま日和っていても状況は変わらないが……だが魔獣が現れると処理をするのが面倒だし、なんといっても毒が怖い……)

今のところボスの攻撃はあのツタでの捕縛のみだが、予測に神経を尖らせないといけないし、疲労でミスをして紫か赤の花を踏んでしまうのが一番最悪だ。

(多少のリスクは無視してでも攻めに転じるしかない!)

「『風跳』」

恐怖を振り払い弓矢を構える。矢は4つ。だが、スキルがあればその程度では終わらない。

「『風穿つ道』、『矢の群衆』!」

4つのうち1つの矢が風を纏いつつ幾本にも分かれ空を貫き、霧が吹き飛ばされていく。その瞬間に色とりどりの花粉がブワッと勢いよく広がり、魔獣が次々に現れる。

「『風纏』!」

浮遊と軽量化で地面に降りる時機を遅らせて接敵を避けつつボスを探していると、明らかに魔獣が密集し、何かを隠すようにしているのを見つけた。

(あそこか!!)

「『風穿つ道』!」

バキィン!

何かが砕けた音がした。

(やったか!?)


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