リーク
私は何食わぬ顔で、城に戻ると、お父様と共に、賊に襲われたと家臣の者たちに伝えた。
私の予想通り、お父様は、城の他の者には、私が魔族にリークしていたことを伝えていなかった。
自分が魔王をだまし討ちしたことや、村を襲っていた黒幕だったことを感づかれることを恐れたのだろう。
お父様とジュリアの葬儀は行った。
世間的には、城に賊が入り込み、王を襲ったことにした。
アンサ勇者は、秘密裏に埋葬し、そのうちどこかで野垂れ死んだことにする手はずになっている。
もう二度とこの国で勇者が任命されることはない。
これで私の当初の目的は達成した。
ただ今度は別の問題が発生してしまったが……。
◇ ◇ ◇
葬儀が終わって数日後。
私が玉座に座ってロンダからもらった指輪を眺めていると、影が動いた。
「ロンダ」
ロンダが姿を現した。
ロンダの腕と王族しか知らない秘密の経路があれば簡単とのことだった。
「呆れるほど大胆なやつだな。そのまま王座に収まるとは」
「魔王にリークしようとする女ですわよ」
「そうだったな」
ロンダは、私が持っていた指輪を見た。
「随分とその指輪、気に入ってくれたみたいだな」
私はロンダに微笑んでみせる。
「それはそうでしょう。この国では、薬指の指輪はエンゲージリング、結婚を約束するものです」
「なるほどな。つまり俺は先に送ってしまったのか」
「もう一度はめてくださらない?」
「いいだろう」
ロンダは、指輪を受け取ると、私の薬指にはめた。
幸福感が心を満たしていく。
私は頷くと、ロンダに言った。
「これで、私とこの国はあなたのものですわ」
「どういうことだ?」
「魔族が襲ったと思われていた村は、魔族ではなく賊に襲われたことにしました」
「ほう?」
「お父様が村を襲っていた黒幕だと分かれば、お父様の血が流れている私にもそれなりの処罰が下るでしょう」
国を治める者には、清廉潔白さを求められる。
自分自身が何もしていなかったとしても、血のつながりがあるだけで、恨まれることもある。
「ですが、賊ということにすれば、魔族とは悲しい行き違いがあっただけということになります。誤解が解けたあと私とあなたが結婚すれば」
「この国は俺の物ということか」
「あなたのお父様もゆるしてくださるのではなくて?」
お詫びの品は、国を丸ごと。
これ以上の物はないだろう。
「さすが国より男を取る女だ。父にも水に流すように伝えよう」
「ありがとうございます」
「では、さっそく和平を結ぶことにするか」
「いいえ、それはできません」
「ん? なぜだ? 結婚するのだろう」
「結婚ももちろんしますわよ。和平も結びます。ただ今すぐはできません。もう少し待ってくださらない」
「それはなぜだ?」
私は妖艶に微笑んで言う。
「そちらと和平を結んでしまうと、隣国の情報をリークできないでしょう?」
「隣国だと?」
私は、お父様の葬儀のため帰ってきた妹が伝えてきた内容の書類をロンダに渡す。
ロンダは書類に目を通すと言った。
「これは……ひどいな」
書類には、数えきれないほどの隣国の窮状が書かれていた。
「どうやら私の妹が嫁に行った国も随分悪い国だったようですね。国土は荒れはてていたのに、王族はやりたい放題で、国民は怒りに満ちていて王族は処刑寸前。ようやく気付いた王族は、非難を避けるため、あなたの国を狙っているようです。妹の話では、勇者の任命が始まったらしいですわ」
「なるほど、隣国は俺の首を狙っているのか」
「そのようですね。ですが、大切な旦那様を殺そうとする者など許しはしません」
「では、どうするか?」
妹にはいつでも逃げ出せる手はずにするかわりに、情報を渡すように伝えてある。
「この国は今まで通りの状態を維持し、つまりあなたの国とは敵対しているふりをしながら、あなたに隣国の情報をリークします。そして、持てる知識を全て動員して、あなたと共に隣国の勇者をすべて倒しましょう」
「そうこなくてはな」
私たちは永遠を誓う口づけを交わした。
すべては私の幸せのため。
魔王と共に野蛮な勇者は皆殺しにしてしまいましょう!
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