お父様、頑張る(3)
「天ちゃん? 何か分かったか?」
心の声が聞こえるおじいちゃんがこう訊いたっていう事は……
本当に分かったのかも。
「ペルセポネのうしろにお化けがいるね!」
……?
え?
「お父……様? 今……なんて?」
わたしのうしろにお化け!?
嘘でしょ!?
わたしそういうのダメなのに!
怖くて振り向けないよ!
「だから、ペルセポネのうしろにお化けがいるねって言ったのっ!」
「……嘘だよね? 嘘って言ってよぉ!」
「え? 本当だよ? 黒いモヤッとした変なのがいるよ?」
「嫌だよ! 怖いよ! お父様、助けて!」
「ええ? お父様だって怖いよ! うわあぁ! モヤッとしたのが動いてるぅぅ! 怖いよぉ!」
「……怖いよ。お化け怖いよ……」
群馬にいる頃からお化けだけは怖いんだよ。
他の生き物は全然怖くないのに。
「ペルセポネ! 今助けるぞ! ……オバケとは何だ? わたしには何も見えないが」
ハデスには見えないの?
ちらっとうしろを見てみようかな?
本当はいないのかも。
……そっと、ゆっくりだよ?
……?
あれ?
何もいないよ?
なんだ、お父様の勘違いか。
「ハデスには見えないの? うしろに……うわあぁ! お化けがペルセポネに抱きついた! こら! 離れろ!」
お父様?
嘘をついている感じじゃないし……
お父様にしか見えないの?
神様だから見えるの?
「天ちゃん? どうしたんだ? 本当にお化けがいるんか? 何も見えねぇぞ?」
おばあちゃんにも見えないんだね。
「どうして誰にも見えないの!? うわあぁん! 怖いよぉ!」
このままじゃお父様が嘘つきだって思われちゃうよ。
まぁ確かに嘘はつくけど、こういう嘘はつかないから……
「お父様……」
「ペルセポネは信じてくれるよね? お父様は嘘なんてついてないよ?」
泣いているね。
お父様は打たれ弱いからね。
「……」
何て言ったらいいのか。
信じているよって言えばいいの?
「ペルセポネ……ペルセポネもお父様が嘘をついてると思ってるの?」
悲しそうな顔をしているね。
「……お父様が今、嘘をついていない事は分かるよ? お父様はわたしが怖がるような嘘を言わないから。それは皆も知っているよ?」
「ペルセポネ……うん。絶対ペルセポネを守るからね? お父様しか守れないんだから! でも怖い……」
「……? お父様しか見えなくて、お父様しか守れない?」
そうか!
それで吉田のおじいちゃんは、お父様に頼んだのか。
お化けはファルズフの呪いで、お父様にしか見えないのかも。
それと、お父様に自信をつけさせる為でもあるのかも。
一人でやりとげて自信を持たせて、娘のわたしを助ける事もできる。
吉田のおじいちゃん?
それが答えなんだね?
何人かは気づいたみたいだね。
でも、誰も口には出さない。
皆、お父様に解決させたいんだ。
お父様の為に。