おじいちゃまは相変わらずだね
「ではわたしの店舗に行ってチョコレートでも」
「え? いいの? あ……でも今日の分のおこづかいじゃ買えないよね」
ベリス王がタダでくれるはずがないよ。
「そうですねぇ。では……おや? あれは?」
ん?
あれ?
何?
暗くてよく見えないけど……
うーん……
え?
あれは……
「おじいちゃま!?」
間違いないよ。
シャムロックにいるルゥのおじいちゃまだよ。
まさかおばあ様から逃げようとしているんじゃないよね?
「え? ペリドット……?」
「おじいちゃま? こんな夜に何をしているの? あ、もしかしてお母様のお墓に来たの?」
「え? えーと……」
「まさか、おばあ様から逃げようとしているの?」
「え? えーと……」
確実に逃げようとしているね。
「叔父様に王位を譲ったの?」
「え? えーと……」
「まだなの!? 船旅で世界を回るんじゃなかったの?」
確かハデスが船をプレゼントするって言っていたよね?
「カサブランカちゃんが……」
「……おばあ様が?」
「全然構ってくれないから……」
「……本当は?」
「……王様の方が良い暮らしができるから譲位したくなくて逃げようかと」
確か、ハデスから金塊をもらう約束をしていたよね?
「……もう! おじいちゃま! 今すぐ帰るよ?」
「……だって船はいいけどお金はもらったらダメだってカサブランカちゃんが……」
「もし帰らなかったら身体の内部から爆発する術をかけるよ?」
「……!? ペリドット!? そんな怖い事を……」
「叔父様もおばあ様も、おじいちゃまが譲位してくれなくて大変だったんだよ? 一日でも早く譲位してあげないとかわいそうだよ?」
「おじいちゃまだってかわいそうだよぉ……何かご褒美でもあれば……」
「ご褒美って……子供じゃないんだから」
「行きたいなぁ。今すぐ行きたいなぁ」
「……? どこに?」
「世界の果てに……」
「世界の果て!? 幸せの島に? でも、それはおばあ様と一緒に来る約束でしょう?」
「船旅はまだ先になりそうだから……」
「ああ。お兄様とココちゃんの結婚が決まってからになったのかな? あ、レオンハルトの事が解決してからだっけ?」
「今すぐ行きたいなぁ。そうすれば譲位してもいいんだけどなぁ」
「……その手には乗らないよ」
「え?」
「そのまま幸せの島に住みついて譲位しないつもりでしょう?」
「うう! どうして分かった!?」
「『どうして分かった』じゃないでしょう? もう! はい。あと五分でおばあ様の元に帰らないと内部から爆発する術をかけたからね」
「……!? ペリドット!? ペリドットちゃん? 嘘だよね? 嘘だよねぇぇ!?」
「あと五分無いね……」
「……うわあぁん! カサブランカちゃんより怖いよぉぉ!」
慌てて走って行ったね。
おじいちゃまに嫌われちゃったかな?
初めて会った時は爆弾が仕掛けてあるアカデミーに、わたしを助ける為に突入してくれたんだよね。
本当は優しくて素敵なおじいちゃまなのに……




