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子守唄と内緒話

「少し前までは……ルゥだった頃は、自分が魔族でも人間でもない中途半端な生き物だって思いながら暮らしてきて、今はペルセポネに戻って天族になったけど……わたしは魔族と人間が大好きで。でも……やっぱり……わたしは……」


 わたしのドロドロした心をこれ以上ベリス王に話していいのかな?

 

(ペルセポネ……)


 ……?

 オケアノス?

 

(子守唄を聞きたいか?)


 え?

 子守唄?


(では、歌うぞ? ラララァ……ララララアアアァァ……)


 ……!?

 なんなの!?

 この微妙に音が外れる子守唄は!?

 気持ち悪い……

 微妙に気持ち悪いよ。

 意識が……遠退いていく……


「……ぺるみ様? 大丈夫ですか?」


「オレは……人間を嫌いになれない」


「……オレ? まさか……オケ……」


「オレは……人間に襲われても……どうしても人間を嫌いになれなかった。それなのに意味もなく何人も殺した。いや、何百だったかもしれない。銀の髪に青い瞳ではない人間だけを殺した。ただの憂さ晴らしに……だが……常に虚しかった。殺しても殺しても心は晴れなかった。満たされなかった。オレの心は……子孫達と暮らしたい、親の愛が欲しい……それだけを望んでいたからだ」


「ぺるみ様のお身体を使いこの世界を滅ぼすのですか?」


「……やめた」


「……え?」


「バカらしくなったんだ」


「……?」


「ハデスと話したら……真面目に考えていた自分がバカらしくなった」


「ハデス様と……?」


「オレは……ペルセポネの魂とひとつになった。だが、まだ完全ではない」


「完全ではない?」


「完全にひとつになるまではペルセポネも不安定になる時があるだろう」


「……そうですか」


「ベリス王……だったか?」


「……はい」


「ありがとう」


「……え?」


「ペルセポネを守ってくれてありがとう」


「……守られているのはわたしの方ですよ」


「ペルセポネを娘と重ねているのか?」


「……!」


「オレは……そうだ。ペルセポネを……娘や孫達と重ねて見てしまう。容姿も優しいところもそっくりだからな」


「……わたしも……まだ前魔王に拐われる前の娘とぺるみ様のお姿を重ねて見てしまうのです。容姿は違いますが……娘も明るく活発でしたから」


「髪の色や瞳の色は違っても……お前も……オレの子孫だ」


「……! ご存知でしたか」


「何でも話せ。種族王……か。大変な立場だな。偉くなると頼れる相手も少なくなる」


「……はい。あの……」


「なんだ?」


「わたしは……娘を亡くなった事にして……」


「ペルセポネの中から見ていた」


「これで良かったのでしょうか……息子は……わたしの心労を減らす為に全てを背負い込んで……」


「あれは立派な息子だな」


「……はい。わたしには過ぎた息子です」


「お前もだ」


「……え?」


「お前も立派だ」


「……!」


「よく頑張ったな。立派だ。パートナーもお前の妹も……あの状態の娘をずっと愛し続けたんだからな」


「ですが……そのせいで娘はずっと苦しみ続けてきました」


「だが、諦めなかったから娘は新たな道を歩めるようになった。ペルセポネがいて、ウラノスがいるこの時までお前達が頑張らなければ娘は赤ん坊にはなれなかった」


「……それは」


「幸せにしてやれ」


「……え?」


「オレは……オレにはできなかった。子孫と離れて暮らすようになって……遠くから時々……見守る事しか……そしてオレは死んだ。ペルセポネの身体から子孫達の現状を見て……ただただ辛かった。幸せに暮らす子孫などいないのかもしれない……と」


「それは……」


「だがお前は違う。娘は生きているんだからな」


「……」


「難しい事は考えずに、ただ愛してやれ。子に必要なのは親の愛だ」


「……わたしも……子孫だとおっしゃいましたね」


「……? ああ。そうだな」


「わたしは……今とても幸せです」


「……幸せ?」


「はい。こうしておじい様に会えて、娘にも愛を与えられる……」


「オレが……おじい……様?」


「ぺるみ様のお姿に『おじい様』などと……変ですが……おじい様ですから」


「……そうか。では……ペルセポネに身体を返すからな」


「……おじい様?」


「ん? なんだ?」


「本当に世界を滅ぼすのをやめたのですか?」


「……お前達子孫がいるのにそんな事ができるはずないだろう?」


「……! はは……本当に……おじい様はかわいらしいですね」


「……!? かわいらしい?」


「安心しました。もしぺるみ様が世界を滅ぼそうとしたら種族王と上位精霊で……ぺるみ様を……」


「世界を守る為にペルセポネを殺そうと考えたのか」


「……いえ。誰も賛成しませんでしたよ」


「え?」


「分かっていただけるまで何度でもおじい様と話し合おうという結論に至りました」


「……全く……甘いな」


「皆……ぺるみ様に触れて変わったのですよ。リコリス王国の人間達も……もし市場にぺるみ様が出入りしていなければ今頃暴動を起こしていたはずです」


「種はまかれた……か」


「はい。あとは、人間がゆっくり未来を変えていくでしょう。ですが……ぺるみ様は鈍感ですから……」


「気づくのは、まだ先になりそうだな」


「どこまでも真っ直ぐで心配になってしまいますが……」


「だから放っておけないんだろう?」


「確かに……これからも……二人の時はおじい様とお呼びしても……?」


「……好きにしろ」


「本当におじい様は、かわいらしいですね」


「……お前も……かわいいぞ」


「え? あはは! それは嬉しいです」


「はぁ……勝手にしろ……」


「……はい。勝手にします」


 ……ん?

 オケアノスの子守唄がとまった?

 うぅ……

 これ以上聞いたら倒れていたかもしれないよ。

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