お父様、頑張る(1)
「おいしいっ! ほら、ヘラちゃんも食べてみて?」
お父様がヘラにグラタンを食べさせているね。
「あら、本当においしいわ! でも自分で食べられるわよ?」
「え? あぁ……あの……あーんってしてあげたいんだよ。は……ははは……」
ヘラは怪力だからね。
普通の食器だとすぐに破壊されちゃうんだ。
本人は知らないんだけどね。
「あら、仲良しね。ふふ。ところで……ゼウスはあのお方から言われているわよね?」
おお!
ヘスティア、すごく自然な感じだね!
「え? あのお方? 誰だっけ?」
お父様!?
まさか忘れていないよね!?
魔族の皆も第三地区の皆も聞き耳を立てているね。
皆も協力してくれる事になっているんだ。
あぁ……
お父様、わたしの呪いが解けているって早く気づいて欲しいよ。
もう皆は知っているんだから。
「誰って……ペルセポネの呪いの事よ? 忘れていないわよね?」
ヘスティアが呆れているね。
「その事は忘れてなんていないよ? でも、どの本を読んでも載っていないし……困ってるんだよ」
「……どの本を読んでも載っていない? ふぅん。執務室の引き出しにあるあの本には載っていないでしょうねぇ。ゼウスはあのいやらしい絵姿集に呪いの解き方が書いてあると思っているの!?」
ヘラ!?
お父様の引き出しを勝手に見たの!?
「あ……あれは……誤解だよぉ……うぅ……」
お父様には無理なのかなぁ。
気づけないのかなぁ。
悲しくなってきちゃった。
「でも、どうして『あのお方』っていう偉い天族はダメダメな神に呪いを調べろって言ったんだ?」
ママが普通に悪口を言い始めたね。
「だってそうだろ? こんなにダメダメなのに全部任せて平気なはずないぞ? 絶対に解決できるはずないだろ? 最初からハデスとか魔王に任せれば早いのに」
ママ……
確かにそうなんだけど。
吉田のおじいちゃんには考えがあるみたいだし……
「うわあぁん。ハーピーってば酷いよぉ。わたしだって頑張ってるのにぃ」
これが神様か……
魔族の皆も呆れているね。
「頑張りが足りないんじゃないか? もしわたしが呪いの解き方を探せって言われたら命がけで探して来るけどな?」
確かにママならそうしそうだね。
「うぅ……どうしたらいいか分からないんだよ。本にも載っていないし、天界中の医師にも分からないし。わたしだって一日でも早く呪いが解けて欲しいと思っているんだよぉ」
お父様が泣き始めちゃった。
あぁ……
わたしのせいだ。
教えてあげたいよ。
「なぁ、天ちゃん?」
吉田のおじいちゃん?
教えてあげるのかな?
「晴太郎? どうしたの?」
「んん。そうだなぁ。天ちゃんはぺるぺるがかわいくて仕方ねぇんだよなぁ?」
「もちろん! すごぉくかわいいよっ!」
「じゃあ、もっとしっかりぺるぺるを見てみろ?」
「え? いつもかわいいなぁって見てるよ?」
「うーん。天ちゃんは、ぺるぺるの容姿がかわいいから見てるんか?」
「え? それもあるけど……やっぱり大切な娘だからかな? 綺麗な女の子は天界にもいっぱいいるけど、ペルセポネは特別かわいいんだよ? えへへ」
「なぁ、天ちゃん? かわいいだけじゃダメだと思うぞ? ちゃんと向き合って心も見ねぇとなぁ」
「心も見る?」
「そうだぞ?」
「心は見えないよ?」
「……そうか。そうだなぁ」
「それに、心が見えたら怖いよ。だってニコニコ笑いながら嫌いって思われていたら……嫌だよ」
お父様はわたしと同じ考えなんだね。