天界での秘密のお話(2)
「そっか。良かった。でも……天界を浮遊させる神力が減っちゃうけど平気なのかな?」
おばあちゃんは、ハデスが勝手に光を持ち出した事に怒っていないのかな?
「ハデスちゃんが光を持ち出してたのは知ってたさ。クロノスの為に……本当にありがとう。それに、ハデスちゃんが今まで自害させてきた天族の神力の方が持ち出した神力よりも遥かに多いからなぁ」
……聞きたくなかったよ。
でも安心した。
冥界とタルタロスを明るく照らす為にそれほど多くの神力は使わないんだ。
やっぱり浮遊させるから大量の神力が必要になるのかな。
「天界をどこかに引っかけられたりしないかな?」
「……!? 月海はすごい事を考えたなぁ。まあ、確かに浮かばせなきゃ神力は使わねぇからなぁ」
おばあちゃんが苦笑しているね。
「少しでも前に進む為には変な考えでも話さないと」
「……もっと早く話せば良かったなぁ」
「おばあちゃん……?」
「月海の言う通りだ。一人で抱え込んでバカみてぇだったなぁ」
「さっきは、何回もバカって言ってごめんなさい。でも……これからは皆で一緒に考えよう?」
「あぁ……月海には敵わねぇなぁ。まだあの光の神力が尽きるまで数千年はあるからなぁ。ゆっくり方法を見つけようなぁ」
「うん。これでもうおばあちゃんは一人で苦しまなくて済むんだね。でもタルタロスにいるクロノスおじい様はこれからどうなるの?」
「……今すぐにでも会いに行きてぇけどなぁ。ばあちゃんは冥界に入門申請書を出してねぇからなぁ」
「そっか……申請書を出して二日経たないと入れないんだっけ」
ハデスに頼めば今すぐにでも行けそうだけど……
心の準備をしたいのかな。
「クロノスは……これからどうしてぇんだろうなぁ」
「……心が聞こえてこないの?」
「いや。クロノスの頭の中はお菓子でいっぱいだからなぁ」
「……お菓子でいっぱい?」
確かにお菓子は好きそうだったけど……
少し違うような気がする。
クロノスおじい様は、皆が思っているよりも色々分かっていそうだったし。
「月海? どうかしたか?」
「ああ……ううん」
よく分からないのに変な事は言わない方がいいよね。
それともうひとつ……どうしてペルセポネの身体は魂を受け入れようとしなかったんだろう。
「じいちゃんが行ってこよう。じいちゃんは毎日入門申請書を出してるからなぁ」
吉田のおじいちゃんが、おばあちゃんに優しく話しかけているね。
「晴太郎……すまねぇなぁ」
「おばあさん。わたしもヨシダさんと共に行こう。洞窟で聞いた話を父上達に話せば状況は変わるはずだ。天界では父上達の存在すら忘れ去られている。それに既に刑期は過ぎているしな。父上達が望めばいつでもタルタロスから出られるのだ」
ハデスも一緒に行ってくれるんだね。
「できれば第三地区に来て欲しいけどなぁ。その前に……ちゃんと謝らねぇと。ばあちゃんのせいで優しいクロノスを傷つけちまったんだからなぁ」
おばあちゃんがすごく辛そうにしている。




