秘密が打ち明けられる時(7)
「……それで……わたしがそれを知って傷つかないように……おばあちゃんもバニラちゃんもわたしを守ってくれていたの?」
「……変だと思わねぇんか?」
おばあちゃんが辛そうにしているね。
「……変って?」
「魂の秘密を知ったら月海の命を奪わねぇといけなくなるって話したよなぁ?」
「……そうだね。今の話を知ってもわたしを殺す必要はないよ」
「月海は……この世界の人間はこれからどうなっていくと思う?」
「え?」
「魔族は確実に人間を食べなくなってきているよなぁ?」
「……うん」
「数千年後にはどうなっていると思う?」
「どうなっている? 数千年後……? ……! 人数が膨れ上がっている?」
「そうだ。魔族は人間を食べなくなって、人間はどんどん増えていくんだ。月海……数千年前、天界では天族が増え過ぎたんだ」
「……え?」
「一度に数を減らすにはどうしたらいいと思う?」
「一度に? ……まさか……戦?」
「そうだ。あの時はそうするしかなかった。あのまま天族が増え続ければ天界は維持できなくなっていたんだ」
「それで……クロノスおじい様とハデス達の戦が……」
「……ばあちゃんは必死に考えた。クロノスと天界の未来を。そして……戦にクロノスが負けてタルタロスに幽閉される事が最善だという結論を出したんだ」
「最善……?」
「タルタロスにいるクロノスの側付きが言った通りだ。全部ばあちゃんがそうなるように仕向けたんだ」
「……おばあちゃん」
「ばあちゃんは最低だ……自分でもそう思う」
「……バニラちゃんはそれに気づいて……全てを知ったらわたしを殺さないといけないって言ったんだね。おばあちゃんを守る為に……」
「バニラちゃんは……本当に優しい子だ。こんなばあちゃんを庇おうとして……それに比べて……ばあちゃんは本当に愚かだなぁ」
「その事実が天界に知られたらおばあちゃんは罰を受けるの?」
「罰は受けねぇだろうが……ばあちゃんは……ずっと……心が痛いんだ……」
「……おばあちゃん」
涙が止まらないよ。
全部一人で抱え込んでいたんだ。
何千年も一人で抱え込んで、自殺して天界を守ろうと考えていたんだ。
「月海……もう記憶は消さねぇ。ばあちゃんは……天界に行って自害するつもりだ」
「……させないよ」
「……え?」
「そんな事は絶対にさせないよ!」
「月海……でも……天界を守るにはそうするしかねぇんだ」
「バカ……」
「……月海?」
「おばあちゃんは大バカだよ! バカバカバカ!」
「……月海は群馬でも、口で勝てねぇといつもそうやってバカバカ言ってたなぁ」
「最期みたいに言わないでよ! どうして天界で何も知らずにバカみたいに権力争いをしているバカ天族を守る為におばあちゃんが死なないといけないの!? そんなバカの為になんでおばあちゃんが何千年も苦しまなきゃいけないの!?」
「月海……」
「それに……おばあちゃんはもっとバカだよ」
「え……?」
「わたしには悩んでいる事は口に出せっていうくせに自分は一人で抱え込んで……確かにわたしじゃ何の役にも立てないかもしれないよ? でも……わたしは……世界中で一番おばあちゃんの事を知っているんだから! それだけは誰にも負けないんだから!」




