秘密が打ち明けられる時(3)
「月海……」
おばあちゃんの声が震えているのが分かる。
「それに……考えたくないけど……もしおばあちゃんが自害して神力を吸収されたとして数千年後にはまた誰かが犠牲にならないといけないんだよね? ずっとずっと続いちゃうんだよ。その度に犠牲者が出るの。今、考えないといけないんだよ。一緒に考えよう?」
「一緒に……?」
おばあちゃんは何千年も一人で抱え込んでいたのかな?
吉田のおじいちゃんはこの秘密を知らないのかも。
知っていたらおばあちゃんと一緒に何とかしようとするはずだよ。
もしかして……
おばあちゃんは誰も巻き込まずに一人で……
でもタルタロスのクロノスおじい様の従者はそれに辿り着いていた。
「訊きたい事があるの。タルタロスにいるクロノスおじい様は……どうしてずっと独房にいるの? どうして扉をなくしたの?」
「……月海は、どうしてだと思う?」
「おばあちゃんは群馬にいた頃からいつもそう訊いてくれたよね。わたしは……こう思うよ。クロノスおじい様を助ける為にはそうするしかなかったんだよね」
その頃の天界にはまだ悪い大天使が大勢いたはずだし、あのクロノスおじい様がずっと神の座に居続けるのはかなり大変だったはずだよ。
それに、お父様を助けているのは先代の神様の娘であるヘスティアやお母様だけど、クロノスおじい様の側付きの身分はそうじゃないはず。
クロノスおじい様を守り続けるのにも限界があったんじゃないかな?
「……本当に月海は賢いなぁ」
「おばあちゃんが育てたんだから当然だよ」
「……! はは。そうだったなぁ。群馬じゃ、ずっと二人きりだったからなぁ。でも成績はそんなに良くなかったけどなぁ。ずっと天ちゃんと遊んでたからだぞ?」
「うぅ……それは言わないでよ……」
「……ありがとう」
「……え?」
「信じてくれて……ありがとう」
「世界中の皆がおばあちゃんを疑ったとしても……わたしだけは、おばあちゃんを信じるよ?」
「月海……クロノスは優しい子だ。月海は会ったから分かるだろ?」
「……うん。お父様にそっくりだったよ」
「ウラノスを神の座から引きずり下ろして欲しいと子供達に頼んだが……それを引き受けてくれたのはクロノスだけだった」
「そうだったんだね。でも、どうして子供達に頼んだの? 自分でもできたんじゃないの?」
「確かにそうだなぁ。それをやった奴に次期神の座を与えたかったんだ。もう世代交代の時期だったしなぁ。でも、まさかクロノスが局部を切り落とすなんてなぁ」
「なるほど。局部を切り落としたのはクロノスおじい様の考えだったんだね」
おばあちゃんが、そこを切れって言ったんじゃなかったんだ。




