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それでもわたしはハデスを守りたいんだよ

「ペルセポネ……」


 タルタロスから冥界に戻るとハデスが心配そうに話しかけてくる。


「……うん。おじい様は……あの……」


 なんて言ったらいいのかな?


「話したい事は話せたのか?」


「……うん。お父様……みたいだったよ」


「そうか。……そうだな。ゼウスに……よく似ているな」


「……おじい様の……お腹の中にいた時の事を……教えて欲しいの」


「あぁ……そうだな。暗く、寂しい場所だった。だが、それより辛かったのは……父上が思い悩む声が聞こえてきた事だ。父上は……自らの意思で我ら姉弟を呑み込んだわけではなさそうだった」


「……そう」


 おばあちゃんにやらされたの?

 ……そんな風に考えたらダメだよ。


「だが……その時の事を思い出そうとすると頭にモヤがかかったようになるのだ」


「モヤ……?」


 もしかして……

 記憶を消されているの?


「デメテル達も詳しくは思い出せないらしい。ただ父上が苦しんでいた事は確かだ」


「……うん」


「ペルセポネ……」


「……ん? 何……かな?」


「……わたしでは……力にはなれないのか?」


「……え?」


「わたしに……話はないか?」


「……ハデス。あの……ね。わたしはずっと逃げていたの。おばあちゃんとバニラちゃんに甘えていたの。でも……それじゃダメだって気づいたんだ。だから……行ってくるよ」


「……どこへ……行くのだ?」


「おばあちゃんと話してくる。これ以上……こんな風に……おばあちゃんを疑うなんて嫌だから。わたしは……おばあちゃんの事が大好きだから」


「……わたしも……共に行こう」


「ハデス……?」


「すまない。タルタロスでの話を……聞いてしまったのだ」


「……どの辺りから?」


「……え?」


「どの辺りから聞いていたの?」


 おばあちゃんに心を聞く力がある事を知られたら大変だよ。

 すぐに記憶を消さないと……


 ……あぁ。

 そうか。

 おばあちゃんもバニラちゃんもこうやってわたしの記憶を消してきたんだね。

 わたしを守る為に。

 でも一体何から守ろうとしているの?


「ペルセポネ……大丈夫か? 顔色が悪いぞ?」

 

「ああ……うん。大丈夫。ハデス……どの辺りから話を聞いていたの?」


「どの辺り……そうだな……独房に穴があった辺りから……か」


 ほぼ初めから聞かれていたんだね。

 やっぱり記憶を消さないと……


「ハデス……ごめんなさい」


「ペルセポネ……わたしの記憶を消すのか」


「……うん。ハデスに生きていて欲しいから……」


「……もう少しあとではダメか?」


「……え?」


「おばあさんと話したあとではダメか?」


「……ごめん。わたしは……ハデスを……守りたいの」


「ペルセポネ……」


「ごめん。ごめんなさい。わたしは自分勝手な卑怯者だよ。……ハデスを喪いたくないの」


「……死なないでくれ」


 ハデスの辛そうに震える声に心が痛くなる。

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