表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

954/1484

タルタロスで(7)

「……クロノス様も……今でもずっとガイア様を愛していますよ」


 今でも……?

 こんな風に閉じ込められていても?


「クロノスおじい様にも……心を聞く力があるの?」


「……なぜそう思いましたか?」


 クロノスおじい様の側付きが険しい顔になったね。


「さっき……おばあちゃんが泣いているって言っていたから」


「……心が聞けたり……遠くが見えたりするのは……辛い事のようです」


「……うん。わたしも……そう思うよ」


「ペルセポネ様。ガイア様は……心の中で泣き続けているようです。何千年もずっと……」


「……ずっと。そう……おばあちゃんは今も心で泣いているんだね」


「本当にガイア様に全てを尋ねるのですか?」


「わたし一人で悩んでも解決なんてできないから……それに一秒だっておばあちゃんを疑いたくないの」


「……何かあればすぐに冥界に逃げてください。ガイア様も冥界には勝手に入れませんから」


「……うん」


「ペルセポネ様?」


「今日……ね? 人間の公開処刑があるの」


「……え?」


「わたしは酷いから……知り合いじゃない人間が処刑されても心なんて全然痛まないの。それなのに……おばあちゃんが酷く言われるのは辛くて……本当にわたしは自分勝手だよね」


「……一度……頭をからっぽにしたらどうでしょう」


「え……?」


「難しく考えずに自分らしく素直になってみるのです。クロノス様のように……」


「おじい様みたいに?」


「どこまでも真っ直ぐで……確かに手はかかりますが……こんな風に生きられたら……きっと幸せでしょうね。誰の事も疑わずただ信じて……裏切られた事にすら気づかない。……いえ、もしかしたら……我らには見えないもっと深いところを見ているのかもしれません」


「……もっと深いところを?」


「……ペルセポネ様。空は今も青いですか? 天界は眩しいですか?」


 そうか。

 タルタロスには空がないから。


「うん。青いよ……」


「……そうですか」


 やっぱり天界に帰りたいよね。

 ずっとタルタロスに囚われている皆に、おばあちゃんを信じたいなんて言って傷つけちゃったかな。

 結局わたしは自分勝手な愚か者なんだね。

 でも……

 おばあちゃんを疑うなんてどうしてもできないから。

 尋ねたら真実を話してもらえるのかな?

 記憶を消されて終わるのかな。

 考えてみたら今までは深く知ろうとしてこなかったよね。

 知ったらダメな事を知ったから記憶を消されたんだって納得して。

 たぶんそのたびにおばあちゃんとバニラちゃんは苦しんで……

 それなのに、わたしは全てを忘れて楽しく暮らしていたんだ。

 嫌な子だよ。

 わたしは卑怯者だよ。

 こうしている間にもおばあちゃんは泣いているんだ。

 もう逃げない。

 おばあちゃんに訊くんだ。

 全てを話してもらうんだ。

 皆が前に進めるように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ