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タルタロスで(6)

 ダメだ……

 涙が溢れてきた……

 泣きたくなんてないのに。

 でも……

 大好きなおばあちゃんを疑っている自分が情けなくて……

 わたしは……

 ……そうだよ。

 おばあちゃんを信じたいんだ。

 月海るみの時もルゥの時も……

 おばあちゃんはずっとわたしを愛してくれていた。

 その愛に嘘なんて無かった。


 ……?

 誰かが髪を撫でてくれている?


「……クロノス……おじい様……?」


 口の周りがチョコレートで汚れているね。

 小さい子みたいに純粋で綺麗な瞳だ。

 泣いているわたしを心配してくれているの?


「……もっと」


「……え?」


「もっと……(信じて)」


「あ……もっとチョコレートが食べたいのかな? 今はもう無くて……」


「……泣いてる」


「……ごめんなさい。泣きたくなんてないのに……とまらなくて……」


「……お母様……泣いてる」


「……え?」


 お母様……?

 クロノスおじい様の母親はガイア……

 おばあちゃんが泣いているっていう事……?

 

「……眠い」


「え? 眠い?」


 クロノスおじい様がベットに横になったね。

 側付きの一人が口を拭いている。


「……ペルセポネ様。大丈夫ですか?」


 さっきまで色々教えてくれた天族じゃない方が心配してくれている。


「……うん」


「先程の話には我らの想像の部分もあります。どこまでが真実かは結局ガイア様に訊かなければ分からないのです」


「あなたは……おばあちゃんに『様』をつけるんだね」


「クロノス様が……ガイア様を大切に想っているのは事実ですから……」


「……そう……なんだね。あのね? わたし……おばあちゃんに全部訊いてみるよ」


「……正気ですか? 消されますよ?」


「……このままおばあちゃんを疑う気持ちで第三地区に帰っても心を聞かれちゃうだけだから。わたし……おばあちゃんを信じたいの」


「そういうところは……クロノス様によく似ていらっしゃる」


「……皆は……ずっとタルタロスにいる事に納得しているの?」


「……クロノス様が天界に帰ったとしても居場所は無いでしょう。それにタルタロスは仕事嫌いのクロノス様にとっては素晴らしい場所です。ぐうたらしてベットに入りながらお菓子を食べても誰にも何も言われませんから」


「……そう。さっきのクッキーは誰がおじい様に? タルタロスではおやつももらえるの?」


「ハデスが……」


「ハデス?」


「……ハデスはクロノス様がこの状態の事を知っていますから。コットス達に頼んで毎日お菓子を届けてくれています」


「ハデスは知っていたんだね」


「……ハデスは優しい子です。この数千年姿が見えなくて心配でしたが……今はペルセポネ様と幸せに暮らしているのですね。そういえば、ハデスがいない間は誰がお菓子を……?」


「……変な事を訊いてもいい?」


「……はい?」


「おばあちゃんの事……もし本当にクロノスおじい様を利用していたとして……赦してもらえるのかな……」


「……え?」


「絶対に……理由があるはずなの。おばあちゃんは……本当に……皆の事を……大切に想っていて……だから……勘違いであって欲しい。おばあちゃんは酷い人じゃないよ……」


「ペルセポネ様……心から信じているのですね」


「……ごめんなさい。皆はずっとタルタロスで苦しんできたのに……甘い事を言ってごめんなさい」

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