タルタロスで（3）
「ハデスは、こいつの腹に呑み込まれた時に、こいつの心が聞こえていたと言っていた。その時こいつの感情を聞いて同情したんだろう」
クロノスおじい様の側付きの一人が教えてくれたけど……
「……ハデスはクロノスおじい様の事が大好きなんだよ」
「……それは……分かっている。だが……我らは罪人だ。ハデスとは距離を置かねば」
「……ハデスが天界から神力の光を持ち込んだ事は知っているんだよね？」
「このバカが口を滑らせたんだ」
……このバカ？
クロノスおじい様の事だよね？
「数千年前、ハデスが冥界に光を持ち込んだ事を知ってから、クロノスおじい様に距離を置かれたって悲しんでいたよ」
「……それは……ハデスに、これ以上我らの為に罪を重ねさせない為だ」
「……うん。そうなんだろうとは思っていたよ。おじい様は……どうして天界の光の存在をハデスに教えたの？」
「あぁ……ハデスが……暗い冥界とタルタロスを明るくしたいと言ったのを聞いてそれなら天界の隠し部屋に光があると……」
「口を滑らせたんだね」
「……ペルセポネは……こいつの……この姿に驚かないんだな」
「お父様にそっくりだからね」
「……こいつは……数千年前……息子と娘を呑み込んだ。だが……本当はそんな事ができるような奴じゃなかったんだ。あいつさえ……会いに来なければ……」
「あいつ？」
「ガイアだ」
「ガイア……」
おばあちゃん……だよね？
「あいつが、タルタロスにいたコットス達を助け出したいから、ウラノス様を痛い目に遭わせてくれと……」
「あぁ……大事なところを切り落とさせたんだよね？」
「……知っていたのか」
「うん。ウラノスおじい様は、今ではガイアと仲良く暮らしているよ」
「少し前に……ウラノス様が会いに来た」
「うん。それは聞いているよ」
「……ガイアには気をつけろ」
「……え？」
「あいつを信じてはダメだ」
「……あなたも……同じ事を……？」
「……？ どうかしたか？」
「あ……どうして……信じたらダメなの？」
「あいつはタルタロスに囚われていたコットス達を救い出そうとした我らをとめたんだ」
「……え？ おばあ……ガイアはコットス達を助け出したくてクロノスおじい様に頼んだのに？」
「少し考えれば分かる事だった。ウラノス様よりも強いガイアがなぜ自分でやらなかったのか……とな」
「……！ それは……わたしも考えていたよ。天界の戦だってガイアなら簡単にとめられたはずだよ」
「それどころか、さらに戦が激しくなるように煽っていた」
「……そんな」
「ガイアは何か企んでいる。優しい母親面をしながら裏では何を考えているか分かったもんじゃない」
「……おばあちゃんの悪口を……言わないで……」
「……その様子だとペルセポネもガイアを疑っているんだろう？」
……話してもいいのかな？
でも、他に協力者なんて思いつかないし……
