タルタロスで(2)
「おじい様……わたしには治癒の力があるの。……ごめんね。勝手に入るよ?」
……やっぱりすごい豪華な内装だね。
これが独房なんて信じられないよ。
「おじい様? 掛け物を取るよ?」
「……」
「おじい様……? ん?」
掛け物をしっかり握って取られないようにしている!?
何なの!?
小さい子じゃないんだから!
「おじい様!? 具合が悪いんだよね? ほら、顔色を見せて」
「……」
無言だけどしっかり掛け物で顔を隠しているよ!?
それにしてもすごい力だ。
怪力のわたしよりも力が強いなんて。
「おじい様! もう! 子供じゃないんだから! ん? 甘い匂いがする?」
掛け物の隙間からクッキーが落ちてきた?
「うわあぁ! わたしのお菓子っ!」
おじい様が掛け物から顔を出したけど……
「……!?」
なんて綺麗なの……
天族はずっと若いままなのは知っていたけど。
すごく綺麗だ。
今まで見てきた、どの天族よりも綺麗だよ。
「わたしのお菓子……」
「え? あぁ……クッキー……? クロノスおじい様……わたしは……ペルセポネだよ?」
「……ペルセポネ」
「うん。……ハデスから聞いているかな?」
「……」
「あ、そうだ。イチゴにチョコレートをかけた物を持ってきたの。甘い物が好きなら……って!? いつの間にか食べている!?」
この感じ……
お父様にそっくりだよ。
すごくキラキラの瞳になったね。
もっと持ってくれば良かったかな?
「んまっ! 何これ!?」
すごい……
がっついているよ。
神様って皆こんな感じなの?
「クロノスおじい様……」
ダメだね。
全然聞こえていないみたいだよ。
「あの……ペルセポネ様?」
「え?」
いつの間にか誰かがおじい様の独房に入ってきている?
……誰?
「驚かせてしまいましたね。わたしは天界にてクロノス様の側付きをしていた者です」
「おじい様の側付きを? ずっと同じ独房に入れられているの? でもそれじゃ独房にはならないよね」
「……こちらを」
「え? 何?」
……!?
さっきまで棚があった場所に穴が!?
これって……
「クロノス様は……手がかかるのですよ」
「手がかかる?」
「……まるで赤ん坊のようなのです」
「もしかして壁の穴から出入りしてお世話をしていたの? 数千年も?」
「……はい。ちなみにあちら側にも穴が……」
「え?」
反対側の棚が動いたね。
壁の奥から誰か入ってきたよ。
「……やれやれ。ついにバレたか」
「あなたもおじい様の側付きなの?」
「側付きか……乳母のようなものだがな」
「乳母……? 男性だよね?」
「こいつは本当に手がかかるんだ」
「……クロノスおじい様は、お父様にそっくりだよ」
「お父様? 確か……ゼウス……だったか?」
「うん。お父様もこんな感じでお母様達に助けてもらっているの」
「……さすがは親子だな」
「……でも……ハデスはこんな事は何も……」
「ハデスか……こいつの息子とは思えないほどの好青年だ」
「……好青年?」
皆から恐れられているけど。
この天族はハデスが怖くないのかな?




