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ベリス王とペルセポネ(2)

「……ベリス王?」


 それって……?


「自分らしく自分の道を進めば良い……ぺるみ様の決めた道がぺるみ様の生きる道なのですから。我ら種族王はどこまでもぺるみ様に付いていきます」


 ベリス王が優しく微笑んでいる。

 いつもの作り笑顔とは全然違う。

 

「……どうして……こんなわたしに優しくしてくれるの?」


「完璧な生き物とは、何でしょう」


「……え?」


「誰にでも優しくできて、いつも笑顔で……そんな奴の優しさは作り物ですよ」


「……?」


「怒るし、悲しむし、妬む……それが生きるという事ではありませんか? 時には発狂して我を忘れる……それが真剣に生きるという事です。命がけで生きるという事なのです」


「真剣に生きるという事?」


「他人が持つ幸せを妬み、己の不幸を悲しんで……何もできない無力さに腹が立つ。わたしはずっとそうやって生きてきました。娘の病を誰にも知られぬように偽りの笑顔で過ごしてきました」


「……ベリス王」


「そんな状況でもベリス族や傘下に入る種族を幸せにする為に……毎日血を吐く思いで生きてきました。それは……わたしが種族王だからです。責任のある立場を放棄して娘の為だけに生きていたら……傘下に入る種族達はどうなっていた事か……ですが、ぺるみ様は……そうではないでしょう?」


「そうでは……ない?」


「人間の王なのですか? 聖女様なのですか? 確かにルゥ様は聖女様でした。ですが……多くの人間は聖女様の存在自体忘れて、愚かにも傷つけ合いながら生きている。あの時の聖女様の苦しみも知らずに生きているのです」


「……それは……その人間が、わたしを……ルゥを知らない人間だったから……会った事がない人間だったから」


「同じですよ? 会った事がない人間の為に聖女様として死ぬ必要などありません。先代の聖女様も先々代の聖女様も大切な……愛しい知り合いの為に命を落としたのです」


「ベリス王……」


「そして……その……聖女様が守った大切な誰かは……今でも聖女様を想っている」


「……?」


「バニラ様は……毎日花冠を供えているのですね」


「……うん。そうみたいだね」


「……バニラ様は苦しんでいます。オケアノス様が亡くなっていたとしたら浄化をしてあげたいと思い、先々代の聖女様はこの世界の浄化を始めました」


「……うん。バニラちゃんはそう言っていたけど……」


「聖女様なら人間の為に死ぬのは当たり前だなどと考えるような愚かな奴の為に命がけで魔素を祓ったのならば……いたたまれませんが……代々聖女様は愛する誰かの為に魔素を祓い……魔族の治癒をして……亡くなりました」


「……ベリス王?」


「ぺるみ様……ベリス族は遥か昔……まだ、子孫繁栄の実が無かった頃……とある人間との間に子を授かりました。それは……他の魔族とは違い、ベリス族を増やす為ではなく……愛の元に……ただ愛しい者同士が求め合った結果でした。そうして産まれた子は魔族の姿ではなく今のベリス族のような人間に近い姿だったそうです」


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