ベリス王とペルセポネ(1)
ベリアルとジャバウォックと温泉に入ってから第三地区に帰ってくる。
二人は疲れたのか広場でお昼寝を始めたね。
うさちゃんもソファーでずっとお昼寝をしているし……
幸せの島の家の掃除でもしてこようかな?
幸せの島に繋がる海水でできた橋をゆっくり渡ると……
今日も桜が綺麗に咲いているね。
桜の木の下に先々代の聖女が埋葬されているんだ。
……花冠が供えてあるね。
バニラちゃんが来ていたのかな?
大きいため息をつくと埋葬された聖女に話し始める。
「ただいま。アカデミーから帰ってきたよ? アカデミーはリコリス王国にあるの……たぶん……今日は……」
ジギタリス公爵の公開処刑をする日なんだろうな……
昨日クッキー屋さんのジャックが貴族の馬車にはねられて平民の怒りは最高潮に達しているはずだよ。
アカデミーが早く終わったのも貴族の令息と令嬢が処刑前に邸宅に帰れるようにする為なんだろうな。
興奮した平民が貴族を襲うかもしれないし……
今回の公開処刑は今までとはかなり違う事になりそうだよ。
と言ってもわたしは公開処刑なんて見た事はないけどね。
「遥か昔から……人間は厳しい身分制度の中で暮らしていたのかな? ……ごめんね。こんな話……聞きたくないよね。でも……貴族にも優しい人間がいるんだよ? わたしに……公開処刑を知られないように気を遣ってくれて……わたしが傷つくと思ったんだろうね。……でも」
「……そうでしょうね」
……?
この声は……
ベリス王?
「……ベリス王」
「公開処刑を……見に行かないのですか?」
「……」
「ぺるみ様……?」
「皆……わたしを……すごく優しい女の子だと思っているの。でも……それは違う。わたし自身が一番よく分かっているの。わたしは……」
「ぺるみ様は……あまりに辛い事があり過ぎて……お心が疲れているのです」
「……そんなのは……違う……わたしは……自分勝手なの。自分の知り合いじゃなければ……誰がどんな目に遭っても構わないの」
「……」
「だって……どうなったって……いいんだもん……知らない誰かなんて……知らないんだもん」
「……」
「呆れちゃうよね……自分でも呆れているから。知り合いは守りたいのに……大嫌いな伯爵令嬢でさえ助けたいのに、会った事がないジギタリス公爵は処刑されてもなんとも思わないの」
「……」
「こんなわたしが……一時期でも聖女だったなんて……変だよね。先代の聖女も先々代の聖女も……わたしとは全然違ったんだよね……きっと……世界中の人間を守りたいと……思っていたはずだよ」
「……それは……どうでしょう。世の中にそんなおめでたい頭の奴がいたら見てみたいものですよ」
「……ベリス王?」
「皆、自分勝手なのです。皆、自分の大切な誰かが幸せならそれで良いのです。見ず知らずの誰かの為に動くような奴は愚か者の偽善者ですよ。自分はこんなに優しいからと自画自賛したいだけなのです。他人から褒め称えられたいだけなのです」




