オレにできる事ってなんだ? (3)
今回はベリアルが主役です。
もうダメだ!
溺れる……
……?
誰かが引き上げてくれた?
誰が……?
「グルル」
ジャバウォック……?
「あ……ありがとう……助かったよ」
「グルル」
何を言ってるのかは分からないけど助かった……
「オレはダメだな……こんなんじゃぺるみを助けるなんてできないよ」
「グルル?」
「……ごめんな。オレにはジャバウォックが何を話してるか分からないんだ」
「……グルル」
……?
ジャバウォックが爪で砂浜に字を書き始めた?
もしかして話せないだけで賢いのか!?
なになに?
『オレも泳げない』
「え? そうなのか?」
ジャバウォックが頷いたな。
「どうして今まで字を書かなかったんだ?」
『必要なかった』
「え?」
『オレは王子のジャバウォック。王子はオレの言葉が分かる』
「でもぺるみにも第三地区の皆にも字を書かなかっただろ?」
『……昔、字を書いたら悪い事に巻き込まれた仲間がいた。それからジャバウォック族は賢い事を隠すようになった』
「そうだったのか。でも……もう隠さなくていいのか?」
『大丈夫。ぺるみ様も魔王様もオレ達を守ってくれる。それに……字を書ける仲間はもういない』
「……え?」
『昔からいる仲間は皆死んだ。今いる仲間は字を書けない』
「賢い事を隠すようになったから字を書く必要が無くなったのか」
『……あの頃は酷かった。魔王が変わるたびに戦になって……多くの命が奪われた』
「え?」
『皆が……絶望の中で息を殺して生きていた』
「……ジャバウォック?」
あれ?
字を書かなくなったな。
……すごく辛そうな顔をしている。
「おーい! おやつだぞー!」
ばあちゃんが広場から呼んでるな。
「グルル!」
ん?
ジャバウォックが嬉しそうな顔でばあちゃんの所に飛んでいった。
さっきの悲しそうな顔は何だったんだ?
しかも、おいしそうに特大クッキーを食べてるし……
「ははは。ジャバウォックはいっぱい食べるんだなぁ。ほれ、これも食べろ。こっちのも甘いぞ?」
ばあちゃんが嬉しそうにおやつをあげている……
ああ!
オレの分が無くなっちゃうよ!
「ばあちゃん! オレもいるよ! オレも食べるよ!」
危ない危ない。
おやつが無くなるところだった。
そういえば、ずっと寝てるけどうさちゃんは食べないのかな?
「うさちゃん……クッキー食べるか?」
『うるさい』とか言われるかな……
「……」
あれ?
返事がない。
よく寝てるのかな?
「へへ。寝てるとかわいいよな」
「……ダマレ。チビヒヨコガ!」
起きてたのか……
かわいくなくなったぞ。
「チビヒヨコじゃない!」
「……タンレンハ、ドウシタ?」
「……今はおやつの時間なんだ!」
「……オマエハ、イイナ」
「……え?」
「エイエンニ、イキテ、イラレル。ペルセポネノ、ソバニ、イラレル」
「……? うさちゃん?」
「……オレハ、ネムイ。ハナシ、カケルナ」
……?
うさちゃん?
なんか……いつもと違うような?
気のせいかな?
「ベリアルは鍛錬で泳ぐんか?」
ばあちゃんがクッキーをジャバウォックにあげながら話しかけてきたな。
ジャバウォックがすごく嬉しそうにしている。
「うん。でも沈んじゃって泳げないんだ」
「そうか、そうか。じゃあ浮き輪でも作ってやるか」
「ウキワ?」
「待ってろ? 水の魔法石を風呂敷で包んでベリアルの肩に縛ったら……どうだ?」
「うわあぁ! お腹のところに水の輪っかができた!」
「これで沈まずに泳げるぞ? 良かったなぁ」
「ばあちゃんありがとう! うわあぁ! すごいなぁ……」
「なんだ。ベリアルは休憩か?」
人魚が水の塊に下半身だけ入れて陸に上がってきたな。
「うん! ばあちゃんが沈まないようにしてくれたんだ。おやつを食べたら鍛錬の再開だ!」
「そうか! 鍛錬とは死ぬか生きるかのギリギリを攻める事だからな! 死ぬ気でやるんだぞ!」
……さすがハデスに鍛錬された人魚だな。
言ってる事が怖過ぎるぞ。
オレ……
もしかして今から大変な目に遭うんじゃないか?




