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優しい嘘と親の愛~後編~

「実は……先程まで魔王城にいたのです」


 ベリス王が微笑みながら話し始めたね。


「魔王城に?」


「はい。魔王が種族王達に、この事は他言してはならないと話してくれて……」


「そうだったんだね。あ、それでウェアウルフのお兄ちゃんもいなかったのかな?」


「はい。前ウェアウルフ王も来ていました。ぺるみ様……どうか娘を抱いてあげてください」


「え? いいの?」


「はい。赤ん坊は今朝卵から孵った事にします。そして……娘は明日亡くなった事にします」


「……何か考えがあるんだね?」


「はい。娘が大きくなった時に……優しい姉上がいて……お前を愛してくれたと……話したいのです」


「……そう。娘さんの葬儀はどうするの?」


「家族だけで……と思ったのですが、魔王と種族王達に参列したいと言われまして」


「……わたしも……行ったらダメかな?」


「……え?」


「迷惑でなければ……行きたいな」


「……ありがとうございます」


 ベリス王の瞳から涙が溢れているね。


「ベリス王……赤ちゃんを抱いてもいいかな?」


「はい。もちろんです」


 とは言ったけど……

 

「うぅ……小さくて……首もすわっていないし……怖いな……」


「大丈夫ですよ? ふふ。娘はぐっすり眠っていますね。ぺるみ様の抱っこに安心しているのでしょうね」


 パートナーさんが娘さんの髪を撫でながら話しかけてきたね。


「うぅ……落としちゃいそうで怖いから……パートナーさんが抱っこして?」


「ふふ。ぺるみ様もすぐにハデス様との間に授かりますよ」


「赤ちゃんが……? うーん……でも赤ちゃんってどうやってお腹の中に入るのかな?」


「……え?」


 あれ?

 パートナーさんの笑顔が固まったね。


「どうしたの?」


「えっと……ハデス様とは……え?」


「え? 何?」


「あぁ……えっと……これは……」


「え? どうかしたの?」


「ふふ。ハデス様はぺるみ様が大切過ぎて踏み切れないのですね」


「……? 踏み切れないって……? 何を?」


「ぺるみ様……(ムードですよ?)」


「……? え? ムード? 何が?」


「ふふ。(後で素敵な下着を贈りますね)」


「……? 下着?」


「まぁまぁ……ふふ。純粋なのですね。これはハデス様も大変です」


「え? 何が? よく分からないよ……」


「ふふ。赤ん坊が授かりましたらベビー用品はぜひ我が王の店舗で!」


「……え? パートナーさんは商売上手だね」


「ふふ。はい。ベリス族ですから」


「え? あはは! そうだったね」


 ベリス族が人間相手の商売をしているのは娘さんの心を診てくれる人間を捜す為だったんだよね? 

 じゃあ、もう商売は辞めるのかな?


「えっと……ベリス王?」


「はい? なんでしょうか?」


「人間相手の商売はもう辞めるの?」


「え?」


「もう人間相手に商売する必要はないでしょう?」


「え? 確かにそうですが……これからも続けます」


「そうなの?」


「はい」


「妹さんと商売で競っているから?」


「え? あぁ……妹も商売をしながら、人間から娘の治療法の情報を得ようとしていたのです」


「そうだったの……」


「はい。ですが妹には商売の才能が無く……いやぁ……困ったものです」


「な!? お兄様! 酷いです!」


 おぉ。

 妹さんが怒り始めたよ。

 来ていたんだね。


「ははは。お前は昔からすぐに怒るんだな」


「お兄様が、からかうからです! だいたいお兄様は昔からおやつは取るし意地悪はするし本当にやる事が子供なのです!」


「ははは。全くいつの話をしているのか」


「それだけではありません! 嫌な事は全部やらせるし、背中が痒いからと掻かせるし、靴下の臭いを嗅がせるし……」


「ははは。全くいつの話をしているのか」


 ベリス王は軽くあしらっているね。

 これは妹さんがかわいそうになってくるよ。


「とにかく! 人間相手の商売で絶対にお兄様に勝ってみせますから!」


「ははは。全くいつの話をしているのか」


「んもう! お兄様っ!」


「ははは。お前はいつまでも赤ん坊だな」


「んもう! 怒っているのですよ!?」


「ははは。怖い怖い」


 ベリス王は妹さんが好き過ぎてかまいたくなっちゃうんだね。

 これは妹さんも大変だよ。

 

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