優しい嘘と親の愛~前編~
「ベリス王、ありがとう。うさちゃんは冥界でもソファーが欲しいってずっと言っていたから」
良かった。
買わされていたらいくら払わされていたか……
金塊くらいは要求されていたはずだよ。
「そうでしたか。娘を寝かせるお礼として欲しいと言われたのに今朝になってしまい申し訳ありませんでした」
ベリス王が優しく微笑みながら話しているね。
娘さんの事はどうなったんだろう。
「えっと……」
訊かない方がいいのかな?
「ぺるみ様……昨夜……息子に嘘をつかれました」
「……え?」
「優しい嘘を……」
「優しい……嘘?」
「娘は、うさちゃんが眠らせると赤ん坊になった……と」
「……ベリス王は……どうしてそれが嘘だと思ったの?」
ベリス王の隣にいる王子の目が腫れているね。
わたし達が帰った後に、お姉さんの事を話しながら泣いたのかな?
「父親ですから」
父親だから……?
「……そっか」
「息子は、娘が亡くなった事にして、赤ん坊をパートナーから産まれた末の娘という事にして欲しいと言ってきました」
「……そう」
「……わたしは……娘を……守れなかった。前魔王に拐われた時に共にいたのに……そして……今までずっと苦しませ続けてしまった。もう一人の子も……胎児として死なせてしまった」
「……うん」
「娘を娘として育てたいとも思いました。ですが……そうすると……パートナーのお腹にいるはずの胎児が亡くなった理由を息子達に話さなければいけなくなります。そうなれば娘はまた、息子達に恨まれながら暮らさなければならなくなります」
「……うん」
「わたしは……息子の嘘を……真実にしたいと思います」
「……え?」
あれ?
ヘスティアの後ろに……
ベリス王のパートナーさんと……赤ちゃんがいる?
「ぺるみ様……」
パートナーさんの目が腫れているね。
たくさん泣いたのかな?
でも……
昨日とは別人みたいに穏やかな顔をしている。
「パートナーさん……ふふ。赤ちゃん……気持ち良さそうに寝ているね」
「……はい。ぺるみ様……本当にありがとうございました。この子は……今度こそ……幸せの中にだけ過ごさせます。決して誰にも傷つけさせない。決して誰にも奪わせない。本当に……ありがとうございました」
パートナーさんの瞳が力強い。
昨夜とは全然違うよ。
あぁ……
これが母親の強さなんだね。
「ベリス王子は立派だね。素敵な王子様だよ」
「ぺるみ様……」
「お姉さんの為に……ベリス王とパートナーさんの為に辛い決断をして、一人で全部背負い込もうとして……」
「……息子は多くは話しませんでしたが……見当はついています。母親ですから……」
「……そう」
「種族王達と第三地区の皆様には話しておきたくて……」
「……話して良かったの? この事は秘密にした方が良かったんじゃないかな?」
「信じていますから」
「……え?」
「皆様の事を信じていますから」
「パートナーさん……」
水晶で途中まで見られていたから憶測で誰かに話されるくらいなら、赤ちゃんを連れてきてこれから先の事を話した方が妙な噂は立たないだろうけど……




