親としての愛と不安
「ペルセポネ……」
わたしを呼ぶお母様の声が震えているのが分かる。
「それに……ね? わたしの心にいるオケアノスだけど……」
「オケアノスがどうかしたの?」
「うん。全然怖くないの」
「……え?」
「誰だか分からなかった時は怖かったけどオケアノスだって分かったら……むしろ、かわいいっていうか……」
「……かわいい?」
「うん。中二病みたいな?」
「チュウニビョウ? 何かの病なの?」
「うん。大人になると黒歴史として残る恐ろしい病気だよ」
「……黒……?」
「とめられるよ……」
「ペルセポネ?」
「だって分かるから。ずっと……わたしはオケアノスでオケアノスはわたしだったから」
「でも……心配なのよ」
「心が……ね? 熱くなったの」
「え?」
「さっきもベリス王の娘さんに神力を使ったけどオケアノスは、とめなかった」
「……それは?」
「オケアノスは寂しいんだよ。親の愛に飢えているから。だから……ジャックを治す時も最後はわたしに折れてくれた。ジャックを治す事を許してくれた。ベリス王の娘さんの時も神力を使う事をとめなかった。きっと、泣いている親の姿に心が痛んだんだよ」
「……そうだとしても……もし、この世界を滅ぼそうとしたら?」
「とめるよ。大丈夫。今こうしている間もオケアノスはわたしを通して世界を見ているの。少しずつ……オケアノスはわたしになっていくはずだよ。もしオケアノスがわたしを乗っ取ろうとしているのなら今の時点でわたしはオケアノスになっているんじゃないかな?」
「あまり楽観的に考えないで……? お母様は心配なの。ペルセポネを愛しているから……」
「……うん。お母様……オケアノスはね? 悪い子じゃないの。寂しがりやさんの甘えん坊なんだよ。幼い子供みたいに……ただ親の愛を求めているの」
「ペルセポネ……?」
「わたしがオケアノスの寂しさを受け止めるよ。今まで皆がわたしに与えてくれた愛の温かさをオケアノスに知って欲しいの。この幸せな気持ちをオケアノスにも感じて欲しいの」
「……もしも……ペルセポネを喪ったら……」
「お母様……」
そうだよね。
お母様は一度わたしを喪っているんだ。
わたしがそう思うからなんていうフワフワした言葉に納得なんてできないよね。
どうしたら安心してもらえるかな?
「デメテル……ぺるみを信じよう?」
ママがお母様に話しかけたね。
「ハーピー? ペルセポネを……信じる?」
「デメテルが大切に守ってきたペルセポネは、いつの間にか……困っている誰かを守れるくらい立派になった。この世界に来てからのルゥは甘えん坊の赤ん坊で……でも、いつの間にかこんなに大きくなった」
「……ハーピー」
「わたし達に出来るのはぺるみを支える事だ。ぺるみの隣で一緒に笑ったり泣いたり怒ったり悩んだり。……オケアノスの事は確かに心配だよな。でもぺるみは大丈夫だ。信じてあげよう。わたし達の娘は世界一かわいくて優しくて賢いんだからな!」
「ハーピー……それでも……心配なの」
「デメテル……」
どうしたら安心してもらえるのかな?
わたしまで辛くなってきたよ。
「デメテル……その気持ちはよく分かる。だが……」
ハデスが優しく微笑みながら話し始めたね。




