イフリート王子も辛い過去があったんだね
第三地区に帰ってくると皆が心配そうに水晶を見つめている。
あれ?
水晶に砂嵐が映っているね。
吉田のおじいちゃんがベリス王国で起きていた事を見えなくしていたんだね。
皆はどこまで見ていたんだろう?
全部を話せないから、話しかけにくいけど……
「……ただいま」
「ペルセポネ! 大丈夫だったの? いきなり手が出てきてベリス王子が引きずり込まれて。あの手は一体……」
お母様がかなり慌てているね。
「あぁ。そりゃ、じいちゃんだ。どうしてもベリス王子に見せなきゃならねぇもんがあってなぁ」
吉田のおじいちゃんがベリス王子を引っ張り込んだんだね。
確かベリアルが空間移動を手だけして財布を取り出していたよね。
それと同じ感じなのかな?
「ヨシダさん……それで……ベリス王女は……?」
「……あぁ。……それは……ベリス王の口から聞いた方がいいなぁ。結局じいちゃん達は他人だ。家族の話を勝手にされたら嫌だろ?」
「……そうね。それにしても前魔王は酷かったのね」
「そうだなぁ……」
「他にもかなり被害者がいたのかしら?」
「……そうだなぁ」
吉田のおじいちゃんが辛そうにしているね。
「……ベリス王子は……大丈夫かな?」
イフリート王子が呟いたね。
友達だから心配なんだね。
「イフリート王子……ベリス王子はすごかったよ。すごく立派で胸が痛くなったよ」
思い出しただけで涙が溢れてきたよ。
「そうか。……オレの母上だけじゃなかったんだな」
「……え?」
「母上は前魔王に拐われて、帰ってきてからずっと寝込んでいて……オレが小さい頃に亡くなったんだ」
「……そうだったの」
知らなかったよ。
種族王の息子なのに一人っ子なのは、イフリート王が他にパートナーを選ばなかったからなのかな?
「オレはベリス王子の姉上が、ああなっていた事を知らなくて……王子はずっと苦しんでいたんだな」
「……そうだね」
あ、だから……
アカデミーでグリフォン王がお母さんにプレゼントを作っている姿をイフリート王子に見せないように急いで作らせようとしたんだね。
ベリス王子は本当に優しいよ。
優し過ぎて心配になるくらいだよ。
「オレは母上ときちんとお別れできたから」
「え?」
「ずっと一緒にいたんだ。ずっと話をしてずっと抱きしめたんだ。最期の時まで……母上は笑顔だった。本当は苦しいはずなのに無理して笑ってくれて……オレが笑顔の母上を思い出すようにしてくれたんだ」
「……イフリート王子」
「でも……ベリス王子は……ずっと苦しかったんだな」
「……そうだね」
「ベリス王子の姉上は……元気になるかな?」
「……それは……わたしの口からは言えないよ。でも……ベリス王子もベリス王もパートナーさんも……少しずつ前に進んでいくはずだよ」
「……そうだな。ずっと立ち止まる事はできないからな」
「……うん」
皆が前魔王に苦しめられてきたんだね。
それでも……頑張ってここまで来たんだ。
ベリス王子はベリス王にどう話すんだろう?
ベリス王は、うさちゃんに眠らされた娘さんが突然赤ちゃんになったなんていう嘘を信じるのかな?
それを聞いたベリス王は皆にどう話すんだろう?




