サプライズパーティーが始まる(3)
「皆……ありがとう。嬉しいよぉ……」
お父さんが、バレバレだったサプライズパーティーに泣きながら喜んでいる。
「あははは! 星治は赤ちゃんの頃から泣き虫だなぁ」
吉田のおじいちゃん……
赤ちゃんは泣くのが当たり前だよね?
ん?
っていう事は、おじいちゃんはお父さんが産まれた時にはもう群馬にいたのかな?
「おっほん! じゃあ、皆を代表して。ほら、これは第三地区の皆からのプレゼントだぞ? 開けてみろ?」
吉田のおじいちゃんが、大きい箱を重そうにお父さんに手渡す。
そういえば、わたしにも内緒で皆で何か作っていたみたいだったね。
前ウェアウルフ王のお兄ちゃんも手伝っていたみたいだし、すごい物ができたんだろうね。
「うわあぁ! ありがとう。じゃあ、開けるね? 何かな?」
ふふ。
お父さんは、すごく嬉しそうだね。
何が入っているのかな?
わたしも楽しみ……あれ?
「これは……」
「お月ちゃんの事が大好きな星治の為に作ったお月ちゃん(この世界ばーぢよん)の二分の一人形だ!」
……!?
おばあちゃんのこの世界バージョンのフィギュア!?
しかも二分の一サイズ!?
うわあぁ!
お兄ちゃんが手伝っただけあって本物そっくりだよ。
さすが昭和の大スターの容姿だね。
すごく綺麗だよ。
でも……
なんで正座をして右手が不自然に浮いているのかな?
「星治、ちょっと人形に膝枕されてみろ?」
「え? うん」
……?
どうしたのかな?
「こ……これは!?」
あれ?
お父さんが衝撃を受けている?
どうして?
「すごいよ! 膝枕されるとお母さんの右手がボクの髪を撫でる場所にくるようになっているよ!? うわあぁ!」
お父さん……
そんなにおばあちゃんの事が好きなんだね。
でも……
お父さんはブラックドラゴンのおじいちゃんとイナンナの子供の子孫だよね?
おじいちゃんはイナンナを天界にいた頃大好きだったから……
だからおじいちゃんの遺伝で、イナンナの子孫のおばあちゃんが大好き……とか?
うーん?
それとも、ただマザコンなだけ?
それにしても、嬉しそうだね。
ご機嫌でフィギュアに膝枕されているよ……
娘としては複雑だね。
「ははは。星治が喜んでくれて良かったなぁ! なぁ皆!」
吉田のおじいちゃんも満足そうだね。
第三地区の皆もすごく嬉しそうだ。
「魔王様。わたしからの贈り物も、ぜひ……」
ハデス、ついに渡すんだね。
まだ赤ちゃんだった頃のわたしと、あの頃のおばあちゃんとお父さんのフィギュアを……
「これは……ボクと……月海とお母さん?」
膝枕から立ち上がったお父さんが涙を流す。
「魔王様のグンマでの記憶は、この人形の頃で止まってしまいました。ですが……これからはずっと……家族揃って今のように誕生日を祝ったり、新たに楽しい記憶を増やしていく事でしょう」
「ハデス……」
「魔王様、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう……ありがとう。ハデス……」
あぁ……
お父さんとハデスはお互いを信頼して、尊敬し合っているのが分かるよ。
次は、わたしがプレゼントを渡す番かな?
ドキドキするよ……
「我ら種族王と魚族長からは、こちらを……」
あ……
イフリート王がプレゼントを渡しているね。
種族王達もプレゼントを用意してくれたんだね。
魚族長も一緒に?
なんだろう?
「種族王達と魚族長から? ありがとう。開けてもいいかな?」
お父さんが箱を開けると中に黒い布が入っている……?
「うわあぁ! すごく魔王っぽいね。ありがとう!」
お父さん……
魔王っぽいって……
魔王なんだよ?
ふふ。
確かに普段のお父さんは穏やかで全然魔王っぽくないからね。
お父さんが布を箱から取り出すと黒いマントだと分かる。
裏側は赤黒くて確かに魔王っぽいね。
マントを羽織ると凛々しく見える。
「魚族長も一緒に? ありがとう。あぁ……だからボクの好きな物とかを訊いたんだね? この前、抱きしめたのは身長を測っていたのか」
「魔王様の好みなどを訊き、種族王達と相談してマントにしました。とてもお似合いです」
魚族長も嬉しそうだね。
すごく立派なマントだね。
うぅ……
わたしのプレゼント……
喜んでくれるかな?
心配になってきちゃったよ。