表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

914/1484

ベリス王は、国では優しい王様なんだね

 おばあちゃんと吉田のおじいちゃんとゲイザー族長とバニラちゃんに付いきてもらうつもりだったんだけど……

 わたしが心配だからってハデスとうさちゃんも付いてきたんだよね。


 吉田のおじいちゃんに空間移動してもらったけど、城内じゃなくて街に着いたみたいだね。

 おじいちゃんはわたし達に城内以外も見て欲しかったのかな?


 商人の国だから、もっと物で溢れているのかと思っていたけど……

 月明かりで照らされた街並みは、綺麗に整備されているのが分かる。


「今は夜なので皆休んでいます。こちらに城門があります」


 ベリス王が案内してくれているけど、やっぱり元気がないね。


「ベリス族は寝るのが早いんだね」


「はい。皆商人として早朝から働いていますからね」


「人間相手の商売?」


「魔族相手にも商売をしていますよ? チョコレートやココア、クッキーなどはかなり人気なのです」


「へぇ。魔族は甘い物が好きなんだね」


「最近になってからですよ? ぺるみ様が種族王と族長達にプリンを振る舞ってからです」


「あぁ……あの時の」


「ぺるみ様のお考え通り、近い未来に魔族は人間を食べなくなるかもしれませんね。あ……少々お待ちを」


 ん?

 人間だったら五歳くらいの男の子が家から顔を出しているね。


「王様! 王様だ! ほら、見てください! 鉄クズをきんに変えられました!」


 かわいい子だね。

 ベリス王にすごく懐いているよ。

 瞳をキラキラ輝かせて小さい金を見せているね。


「あぁ……すごいな。よく頑張った」


「えへへ。次はもっと大きい鉄を金に変えます!」


「ははは。焦らずにゆっくりで良いのだ。それより、もう眠る時間だ。早く寝ないと大きくなれないぞ?」


「王様に金を作れた事を知らせたかったけど最近は忙しそうだったから。話し声が聞こえたから王様かなと思って」


「そうか。それは悪い事をした。ほら、お詫びのキャンディだ」


「お詫びではなくご褒美です!」


「……そうだな。初めて鉄を金に変えられた褒美だな」


「はいっ! 大切に飾っておきます!」


「さあ。もう眠らないと明日も早いぞ?」


「はいっ! えへへ」


 ベリス王は国では優しい王様みたいだね。

 いつもの作り笑いじゃなくて、すごく優しく笑っていたし。


「ふふ。ベリス王は優しい王様なんだね」


「……そう見えましたか?」


「うん。あの子もすごく懐いていたし」


「人間もそうですが……魔族も幼子には愛を注がねばなりません。ですが、それができるのは心に余裕のある者だけです。飢えに苦しみ追い詰められた親には子に愛を与える事など不可能なのです」


「ベリス王……」


「わたしは種族王としてベリス族にも傘下に入る種族達にも、子に愛を与えられる暮らしをさせる義務があります」


「……うん」


「……信じていただけるのですか? 嘘だとは思いませんか?」


「ベリス王……今のその表情を見たら嘘じゃない事くらいわたしにも分かるよ」


「……そうですか。わたしは……ダメな父親です。苦しむ娘に何もできずに……」


「何もしていないなんて違うよ。ベリス王の頭の中はいつも娘さんの事でいっぱいなんでしょう?」


「……はい。……この門をくぐればすぐに城内に入れます」


「うん……」


 わたしにできる事があるのかな?

 吉田のおじいちゃんにさえ難しいのに……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ