あまりに辛過ぎて心が痛いよ(3)
「……ベリス王子は……お姉さんを守りたいから次期ベリス王になろうとしているの?」
「……そのようです。あの子だけは……娘が……魔王にやられた傷を……見ましたから」
ベリス王が昔を思い出してさらに辛そうな顔になったね。
「……そう」
「他の息子達は、それからかなり後に授かったので……娘が傷に苦しむ姿を見てはいなかったのです」
「ベリス王……話してくれてありがとう。口に出すのも辛かったよね」
「ぺるみ様……お願いがあるのです」
「うん? 何かな?」
「娘に……一度会って欲しいのです」
「……吉田のおじいちゃんに治せないのに……わたしには……」
「治療は無理だと……分かったのですが……ぺるみ様の周りにいる者は皆幸せになりました。もしかしたら……娘も……と」
「……ベリス王……うん。何もできないかもしれないけど。よし。じゃあ今すぐ会いに行こう!」
「え? 今すぐ……ですか? 体調は?」
「うん! もう大丈夫だよ」
「嫌では……ないのですか? 今の話を聞けば娘が……心を壊している事は分かったはずです」
「……わたしも……心を壊したから……それで自殺までして……でも……皆が支えてくれたの。だから心から笑えるようになったの。今度はわたしが返す番だよ」
「返す番?」
「うん。幸せは返さないと……もらいっぱなしなんてダメだから。次の誰かに渡さないとね」
「幸せを……渡す?」
「うん!」
「……ぺるみ様は……わたしに初めて会った時の事を覚えていますか?」
「ん? うん。覚えているよ?」
「あの時……わたしは……ぺるみ様を息子達の誰かとパートナーにして娘の世話をして欲しいと思っていました。聖女様の神力なら娘を治せるかもと思ったのです」
「……そうだったんだね」
「ですが……初代の神でさえ無理だったなんて……娘には生きていて欲しい……ですが……娘は……本当にそれを望んでいるのでしょうか……わたしのわがままで娘を苦しみの中で無理矢理に生かしているのではと……」
……ベリス王が王子に教えた、嘘の過去の話のリリーさんの父親は……拐われた集落の人間を殺していたよね。
拐われて酷い目に遭わされた人間を……痛くないように殺したって言っていた。
あれは……ベリス王の心だったんだ。
愛する娘さんを一思いに楽にしてあげた方が良かったのかもっていう葛藤……
今もその心と戦っているんだ。
「……行こう」
「ぺるみ様……?」
「おばあちゃん、吉田のおじいちゃん、バニラちゃん、ゲイザー族長……一緒に来てくれるかな?」
「もちろんだ」
「皆で知恵を出してもう一回治療法を考えるか……」
「そうね」
「オレはこの世界に初めからいた者です。何かお役に立てるかもしれません」
「……皆さん……ありがとうございます」
皆なら娘さんの心を聞けるかもしれないよね。
娘さんがどんな状態かは分からないけど……
心を聞ける力がある皆なら……
娘さんが望んでいる事が何なのかを知りたいよ。
ベリス王はこんなに娘さんを想っているんだから……この想いの力になりたい。
ベリス王を金の亡者だと誤解していた自分が恥ずかしいよ。




