いつも狡猾な人が辛そうにしていると心配になるよね
「あ、幸せの島にプリンが冷えているんだった」
パパがプリンを取りに行こうとするとベリス王子が話し始める。
「では、わたしが取りに行きましょう。イフリート王子とグリフォン王も手伝ってください。一人では持ちきれませんから」
「そう? 助かるよ。ぺるみの家のキッチンの箱で冷やしてあるから」
「はい。では行きましょうか」
ベリス王子の様子がいつもと違ったけど……
ベリス王の表情も暗いし。
どうしたのかな?
なんとなくだけどベリス王子が気をきかせて幸せの島に行ったようにも見えたし。
「あの……ぺるみ様……体調は……いかがですか?」
ベリス王が話しかけてきたね。
やっぱりいつもと様子が違うよ。
作り笑いをしていないし辛そうに見える。
いつもは何を考えているのか全然分からないのに。
「うん。ピーちゃんが治してくれたからすっかり良くなったよ?」
「……そうですか。あの……」
「ん? 話しにくい事かな? 二人だけで話す?」
「あぁ……いえ。あの……」
「うん?」
どうしたのかな?
やっぱりいつもと様子が違うね。
「ぺるみ様は……もしあの人間の子が……もう助からなかったとしたら……どうしましたか?」
「……え? ジャックの事?」
「……はい。もしあのまま治癒の力がいつものように使えずに……母親が……諦めたら……どうしましたか?」
「ベリス王? 大丈夫? 顔色が悪いよ?」
「……あのまま亡くなった方が幸せな状況になったとしたら……ぺるみ様は……あの子を……死なせてあげましたか?」
「ベリス王……本当に……顔色が……椅子に座って? 何か冷たい物でも飲む?」
「ぺるみ様! わたしは! わたしは……」
「……うん。ゆっくりでいいから……ベリス王が話せるまでいつまでも待つから」
「……ぺるみ様……ありがとう……ございます……」
ベリス王がこんなに辛そうにするのを初めて見たよ。
普段冷静なイフリート王も驚いているね。
ベリス王の隣の椅子に座るとゆっくり話し始める。
「ベリス王? わたしには治癒の力があるでしょう? でも……それは何にでも使えるわけじゃないの。治せるのは怪我と魔素による病だけ。普通の病は治せないし寿命も延ばせない。だから……歯がゆいんだ。人間のおばあ様やお兄様を……近い未来に亡くす事を避けられないから。分かっているのに何もできずにただ待つ事しかできないの」
「ぺるみ様……」
「わたしは無力だよ。本当に大切な人間の死を待つ事しかできないの」
「……」
「さっきの問は……難しいね。死なせてあげた方が幸せな状況か。……本人がそれを望むなら……でも……壁をひとつ乗り越えたらその状況が変わるのなら……わたしは……助けたいな」
「……ぺるみ様らしい……お考えですね」
「ベリス王? 少し横になる? 身体が……」
震えているよ、なんて種族王に言ったらよくないかな?




