バニラちゃんから語られた真実(2)
「……? バニラちゃん?」
「ペルセポネの身体からわたしの魂が出て、毛玉の姿になった時……ペルセポネの身体にはわたしの魂の一部が残っていたの。その魂が……ペルセポネを飲み込もうとしているのよ」
「……わたしを……飲み込む?」
「ペルセポネの無限に近い神力を使ってこの世界を滅ぼそうとしているの」
「……!? そんな……」
「何度もわたしの中に魂の一部を吸収しようとしたの……でも……上手くいかなくて……というより……もうペルセポネの魂とひとつになってしまっていて、なんともならなくて」
「……わたしの神力で……世界を滅ぼす? わたしが……?」
「魂を……上手く分離できればと……でも……完全に一体化してしまっていて……本当にごめんなさい」
「……バニラちゃんが謝る事じゃないよ?」
「ペルセポネ……」
「そっか。じゃあ……わたしの心が強ければ一体化したオケアノスの心に負けないっていう事か」
「……え?」
「大丈夫! わたしの心はすごくすごく強くなったの。バニラちゃんも知っているでしょ?」
「ペルセポネ……そんな簡単な事じゃないのよ!」
「……わたしを殺して?」
「……!? ペルセポネ!?」
「なんて事は言わないから!」
「ペルセポネ……」
「上手く付き合っていくよ」
「上手くって……この世界を滅ぼそうとしているのよ?」
「さっきは……その心に勝てたから」
「え?」
「ジャックは魔族の餌だから助けなくていいって言ったの」
「……ペルセポネ?」
「わたしは神様の娘だから悪い事をしても赦されるって言ったの」
「……?」
「無駄な力を使うなって言ったの」
「……?」
「この世界を終わらせるって言ったの。……だから……わたしが教えてあげるの」
「ペルセポネ?」
「人間は魔族の餌じゃない。神様の娘でも悪い事をしたらダメなの。大切なジャックを治癒するのは無駄な事なんかじゃない」
「……それは……でも……」
「この世界は終わらせない!」
「ペルセポネ……」
「吉田のおじいちゃんが……ウラノスおじい様が命がけで守ってきたこの世界を! 大好きな魔族の皆がいるこの世界を! 新たな幸せに向かおうと頑張っている人間達がいるこの世界を! ……わたしは見守りたい」
「……ペルセポネ」
「人間のおばあ様やお兄様が亡くなった後も……ずっとずっと見守りたいの。だから……わたしは……この世界を終わらせたりなんてしない!」
「簡単な事じゃないのよ……わたしの憎悪の全てが相手なのよ?」
「受けて立つよ!」
「……」
「だから……どこにも行かないで?」
「……え?」
「バニラちゃん……どこに行こうとしているの?」
「ペルセポネ?」
「わたしはバニラちゃんでバニラちゃんはわたしだったんだよ?」
「……!」
「これからもずっとずっとベリアルのママでいて?」
「ペルセポネ……わたしにはそんな資格はないわ?」
「資格?」
「そうよ。わたしの魂の一部がこの世界を滅ぼそうとしているの。これ以上ここには、いられない……」
「バニラちゃん……ベリアルはバニラちゃんが来てからすごくすごく嬉しそうだったんだよ? それにママになるのに資格なんて必要なの?」
「……え?」
「天界でも、闇と光が混じった空間でもベリアルはずっと孤独だった。だから初めてできたママが嬉しくて……そんなベリアルからママを取り上げたりなんてできないよ」
「でも……」
「バニラちゃんもだよ。もう一人になんてさせないから」
「……え?」
「わたしにもひとりぼっちの苦しさは分かるから」
「ペルセポネ……」
「だから……ずっとベリアルのママでいて?」
「うぅ……バニラちゃん……オレ……バニラちゃんがいなくなるなんて嫌だよ……」
ベリアルが泣いているね。
第三地区の皆も泣いている。
……?
ベリス王がいつもの作り笑いをやめている?
すごく辛そうな顔をしているよ。
ベリス王子がその表情を見て悲しそうにしている?




