バニラちゃんから語られた真実(1)
誰かに髪を撫でられて目を覚ますと第三地区のおばあちゃんの布団に横たわっている。
あれ?
わたし……
確かジャックの治癒をして……
そうだ。
誰かが邪魔をして……それから色々話しかけてきたんだ。
「ペルセポネ! 大丈夫か? あぁ……良かった」
わたしの髪を撫でてくれていたハデスが抱きしめてくれる。
「……うん。平気……」
「ルーチャン……ヨカッタ。カナリ、アブナカッタンダヨ?」
ピーちゃんが群馬から来てくれたんだね。
「ピーちゃん……ありがとう」
「ベリアルガ、ヨビニ、キテクレテ」
「ベリアルが? あれ? ベリアルは?」
「アア……ウン。ヒロバニ、イルヨ」
「そう……あ、ジャックは? どうなったの!?」
「ペルセポネ……こんな時まで……わたしは心配だ。いつかその優しさがペルセポネを苦しめそうで……」
「ハデス……」
「ジャックは無事だ。ヨシダさんが様子を見に行き脳の状態を調べてくれたが大丈夫らしい。一週間は安静にしろと伝えたようだな」
「はぁ……良かった。吉田のおじいちゃんが診てくれたのなら安心だね」
「ペルセポネ……一体何があったのだ?」
「うん……ジャックが馬車にはねられて……治癒をしようとしたら誰かがそれを邪魔して……それで……酷い事をいっぱい言ってきて……」
「あの場にいた人間か?」
「違うの。でも……あれは……」
「あれは?」
「わたし……?」
「ペルセポネ……?」
「バニラちゃんがわたしの中にいた時に話しかけてきたみたいに、ずっと話しかけてきて。自分はバニラちゃんだって言ったの」
「……? だが、ペルセポネの中からいなくなり今は毛玉の姿になっただろう?」
「……うん。わたしもバニラちゃんじゃないと思う。でもそう言ったら……『この世界の始まりが、この世界を終わらせる。余計な力を使うな』って」
「どういう事だ? ペルセポネの中に別人がいる……? まさか……そんな……」
「ぺるみ……目が覚めたんか?」
おばあちゃんが部屋に入ってきたね。
吉田のおじいちゃんも一緒だ。
「おばあちゃん……わたし……怖いよ……怖くて堪らないよ」
誰がわたしにあんな事を……
「ぺるみ……動けるか? 広場に行けそうか? 皆に大事な話があるんだ。第三地区の皆にも魔族達にも聞いて欲しい事がなぁ」
「……うん」
こうしてハデスに抱き上げられて広場に向かうと皆が心配そうにわたしを見つめている。
「……もう、夜なんだね。皆、わたしが目覚めるのを待っていてくれたの?」
種族王達も第三地区の皆もお父さんもいるよ。
「ぺるみ……もう大丈夫か?」
ベリアルが泣きそうな顔で尋ねてきたね。
「うん。ピーちゃんが治してくれたから」
「そうか。心配したんだぞ?」
「うん。ごめんなさい」
「ジャックはもう大丈夫だからな」
「……うん」
「ぺるみ……」
「ん?」
ベリアルが辛そうな顔をしている?
「わたしから話すわ」
バニラちゃんはお出かけから帰ってきたんだね。
「バニラちゃん? どうかしたの?」
「ペルセポネ……とりあえず……皆さんも座ってください。ペルセポネが眠っている間に……全てを話したの……」
「バニラちゃん? 全てって?」
「ごめんなさい……わたしが……全て悪いの」
バニラちゃんはどうしたのかな?




