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絶対に助けたい命~後編~

 治癒の力を使うと、かなりの神力が持っていかれるのを感じる。

 かなり酷い怪我だからね。


 良かった。

 わたしはルゥとは違う。

 神様の娘なんだ。

 人間を生き返らせたら問題になるはずだよ。

 でも、ジャックはギリギリ生きていた。

 これで問題にはならないよ。


 ……ダメだね。

 こんなのは汚い考えだよ。

 わたしはジャックが死んでいたとしても助けたよ。

 それで罰を受けたとしても。

 

 ……死ねばいいんじゃないか?


 ……?

 え?


 こんな生意気な奴は死ねばいいんじゃないか?


 ……え?

 誰が話しかけているの?

 ……違う。

 これは……わたし?


 こんな魔族の餌を助けて自分が罰を受けるなんてバカらしいだろ。


 ……!?

 餌……?


 でも神の子だから罰なんて受けないよな。


 ……あなた……誰なの?


 オレはバニラだ。


 違う!

 バニラちゃんは絶対にそんな酷い事は言わないよ!


 ……もうすぐ。


 え?


 もうすぐ全てが終わる。


 ……全てが……終わる?


 この世界の始まりが、この世界を終わらせる。


 ……え?

 それって……?


 ……


 あ、待って!

 ちゃんと聞かせて?


 ……


 ……今のは……誰?


「ジャック!」


 ジャックの母親が走ってきたね。

 元騎士のお世話係をしている人間が呼びに行ってくれていたんだ。

 ダメだ……

 頭がぼーっとする。


「ぺるみ? どうした? 疲れたのか?」


 ベリアルが心配して飛んできてくれたね。


「……うん? 平気……ジャックのお母さん……」


「はい……姫様……あの……ジャックは……」


「内臓がかなりやられていたから治しているんだけど……頭をどれくらい強く打ったか……誰か見ていないかな?」


「あの……わたしが家の扉を開けた時に見えて……ジャックが……馬車にはね飛ばされて……クッキーが散らばって……強く地面に叩きつけられて……」


 お総菜屋さんのおばあさんはそれを見て慌ててわたしを呼びに来てくれたんだね。

 高齢なのに無理して走って……

 今も、ここまで走って来たみたいだし。


「頭を打ったかは分からないかな?」


「腰から地面に落ちたように見えましたけど……」


「腰から……見ていてもらえて助かったよ。おばあさんのおかげでジャックは助かりそうだよ。もう少し遅ければ間に合わなかったよ」


「そんな……姫様……ジャックは……わたしの息子は……」


 母親は身体が震えているね。


「うん。酷い怪我だよ。かなり治癒の力を使っているけどまだ治りきらないから……」


 ……変だな。

 上手く神力が流れない?


「ジャック……あぁ……ジャック……」


「……絶対に助けるから。絶対に」


「姫様……ありがとうございます……ありがとうございます」


「ジャックは……絶対助けるから……」


 変だよ。

 こんなに神力を使っても治らないなんて……

 違う……

 誰かが神力を使わせないようにしているみたいだ。

 少しずつしか神力が使えない。


「ぺるみ……お前……」


 ベリアルが治癒の力を使うわたしを覗き込んでいる……?


「ん……? どうかした?」


「鼻血が出てるぞ?」


「え? あ……今は……ジャックを治しているから……あとで拭くよ」


「顔色が……かなり……悪いぞ?」


「……?」


 ベリアルが小さく震えている?


「口から……血が……出て……」


 ……?

 口から血が?

 ……あれ?

 変だな……

 目が回る……

 

「……まだだよ……」


 まだジャックを治しきれていないんだよ。


「……ぺるみ……目が……真っ赤だ……」


「邪魔しないで……」


「ぺるみ?」


「わたしの邪魔をしないで! 誰なの!? わたしはやるの! ジャックを助けるの! 邪魔しないで!」


「ぺるみ? どうしたんだ?」


「誰かが治癒の力を使わせなくしているの!」


「え? 誰がそんな……」


「ジャック……死なせない……大好きだから……かわいいジャック……邪魔しないで……邪魔しないでよ!」


 ……!?

 内臓が熱い……

 喉の奥から大量に血が溢れ出てくる。


「ぺるみ!」


「……うっ」


 話せない……

 熱い血が顎を流れていくのが分かる。

 血の味に吐き気がする。


「ぺるみ……」


 ……あれ?

 神力が流れ始めている?

 今なら……


「姫様……もう……」


 ジャックの母親が座り込んで覚悟を決めた顔をしている……?


「ダメ……絶対ダメ……諦めちゃダメ……お母さんが諦めちゃダメ……」


「姫様……」


「こんな時に……他人に気を遣っちゃダメ……なりふり構わずに……助けてって……叫んでいいんだよ? それが……母親だから」


「姫様……」


「できる……わたしならできるから……」


「姫……」


「ほら……ふふ。ジャックの顔色が良くなってきたよ?」


「姫様……」


「すぐに元気になるよ?」


「姫様……? 大丈夫ですか?」


「……うん。わたしは大丈夫。少し眠れば良くなるから」


「姫様……でも……血が……」


「……大丈夫。身体は丈夫だから。ジャックのせいじゃないよ? 誰かが治癒の力を使わせなくしていたせいだから」


「姫様……」


 ダメだ……

 もう少し……

 完全に治すまで……

 もう少し……


 あ……

 良かった……

 治せたね……


 あぁ……

 意識が遠……


 無駄に力を使うなんて……

 余計な事を……  

 ……でも……良かった。


 ……?

 誰?

 さっきから誰が話しているの?

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