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虐げられる平民の気持ち(3)

「皆はすごいよ。すぐに魔術を使えるようになったでしょう? 今まで頑張ってきた証拠だよ」


「ペリドット様……」


 水属性のジャックが辛そうに呟いたね。


「これからも貴族とは関わらないわけにはいかないんだよね。魔塔にも貴族がいるだろうしお客さんのほとんどは貴族なんでしょう?」


「はい……だからこそ強い力が欲しかったんです。でも市場の相談役は魔力が無くても勲章をもらえるくらいすごくて。力が強いだけじゃダメなんだって思うようになりました」


「力でねじ伏せた方が簡単だよね。でもそれだと力が無くなったら全てを失うんだよ。でも心は違うよね。相談役はずっと一人で市場を守ろうと頑張ってきたの。その姿を見てきたクッキー屋さんのジャックは次期相談役になろうって頑張っているんだよ? 甘いかもしれないけど……わたしは心を大切にして生きたいよ。貴族相手には難しいだろうけど……」


「確かに貴族は平民を人だと思っていないから……オレも貴族は嫌いだし……正直、平民を虐げる貴族は皆処刑されればいいと思うくらいです。でもそんなの無理だから。オレ……貴族からも尊敬されるような水の魔術師になれるように頑張ってみます」


「心がモヤモヤするよね。どんなにジャックが頑張っても貴族は身分制度で上位にいるからそれを認めてはくれないだろうし」


「それが平民ですから」


「……」


 わたしは神様の娘だし、群馬には身分制度なんて無かったし。

 この世界に来てからはずっと魔族に姫様として大切にされてきた。

 だから、虐げられる方の気持ちも、虐げる方の気持ちも分からない。

 虐げる方は、それが当たり前で……

 でも、そんな貴族も自分より上位の貴族にバカにされているんだよね。

 だから、自分よりも下位の貴族や平民を虐げて憂さ晴らしをする。

 そして、平民はそれを黙って我慢して受け入れるしかない……


 嫌な構図が出来あがっているんだ。

 弱い者はどこまでも虐げられているなんて……

 お兄様はどうやってこの身分制度を変えていくんだろう?

 ……きっとお兄様が生きているうちには変わらないだろうね。

 でも……

 わたしはその未来を見る事ができるんだ。

 お兄様がこの世界を変えようと頑張る姿を絶対に忘れない。

 お兄様が亡くなった後も……

 ずっとずっと忘れない……

 皆が住みやすくなった未来をわたしが見守るからね。


「……ペリドット様? 涙が……」

 

 え?

 あ……

 いつの間にか涙が溢れていたんだね。


「……ごめん。泣くつもりは無かったの」


「ペリドット様……オレ達の為に泣いてくれているんですね。聖女様は魔素を祓って……命をかけてオレ達を守ってくれたのに……こんな話をしてごめんなさい」


「謝らないで? わたしは後悔なんてしていないから」


「こんなオレ達を守って……本当に後悔していないんですか? 弱い者を虐げる貴族と……その貴族が皆処刑されればいいなんて汚い心の平民……最低ですよ。救う価値なんてあったんですか? 魔素は苦しいって聞きました。聖女様は苦しみながら亡くなったんですよね。オレ……申し訳なくて……こんな醜い心の自分が嫌になります。でも、オレはやっぱり貴族が嫌いなんです」


「今までされてきた事を思えば仕方ないよ」


 ずっと虐げられてきたんだから。

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