虐げられる平民の気持ち(2)
「二人は貴族があまり好きじゃないんだね」
「え? あ……あの」
「……それは」
水属性と火属性のジャックが話しにくそうにしているね。
「大丈夫だよ? 誰にも言わないから」
「あの……オレは……平民だから……貴族にずっとバカにされてて……王都にいる貴族に殴られたりする事もよくあって……」
「オレはかなり田舎で暮らしていたんです。領主には会った事が無いけど、その息子がかなりわがままで。今は寮で暮らしているからいいけど、両親とか近くに住む人達は今も領主の息子にずっと虐げられているんです」
「なるほど。だから皆に良い暮らしをさせたくて……水の魔術を使えるようになって貴族の邸宅で働きたいって言ったんだね」
「はい。オレが貴族の邸宅で働ければ皆を王都に呼んで……って思っていたんですけど……王都の方が平民は生きにくくて。これからどうしようか考えているところです。それに、魔塔で働きたいって思えるようになったから、そうなるとまた色々変わってくるだろうし」
「そっか。難しい問題だね」
「とりあえず今は魔術をちゃんと使えるように頑張ろうと思ってます。魔塔に入らないと先に進めませんから」
「貴族にずっと虐げられてきたから……赦せないんだね」
「はい。ペリドット様や王子様達は特別なんです。オレ達を人扱いしてくれるから。でも他の貴族達は……オレ達を生きる価値もないみたいに……だから……ジギタリス公爵の処刑が決まった時にはスカッとしたんです」
「……そっか」
「……分かってます。酷い事を言ってるのは。でも……今までされてきた事を考えたら……嬉しくて仕方なくて。ジギタリス公爵とは会った事もないんですけど。オレからしたら貴族は皆同じだから」
「……うん」
わたしが人間を全部同じだと思っていたみたいに、ジャック達も貴族は皆悪いと思っているんだね。
でも、それは違うよなんてわたしが言うのは違うよね。
今までかなり虐げられてきたみたいだし。
「ジャック達はそんなに酷く虐げられていたんだね」
マリーちゃんの国『ジャック』は小さくて王様も優しいから貴族に虐げられた事がなかったんだね。
アカデミーに来てからは大変だったんだろうな。
「貴族って聞くだけで怖くて。だからアカデミーに入学できるって決まった時もすごく怖かったんです。でも……誰かが一歩前に進まないと家族や近所の人達はずっとこのまま虐げられる事になるから」
「だから、魔術を使おうと無理ばかりしていたんだね」
「はい。あの時のオレはかなり追い詰められていました。でもペリドット様のおかげでこうして前に進めたんです。とりあえず今は誰かの為じゃなくて自分の為に頑張ろうって。皆が幸せになれる方法を自分なりに探してみます。そうじゃないと、また前みたいにいっぱいいっぱいになっちゃいますから」
「そうだね。わたしも二か月間協力させてもらうよ? 魔塔に入りたいっていう素敵な夢を叶える為に」
「二か月……寂しいです……あっという間ですね」
二か月か……
本当にあっという間なんだろうな。




