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嫌な予感しかしない

 ルゥが眠っている家の結界を外すと、グリフォンのお兄ちゃんに話しかける。

  

「……ルゥは、幸せだったかな?」


「はい。わたしの中の聖女様はいつも笑顔で……だから、幸せだったはずです」


「……ありがとう」


「ぺるみ様?」


「うん……誰も責めないの。ルゥの身体を勝手に使った事を……人間のおばあ様もお兄様も……それは優しさだって分かるの。でもわたしはその優しさに甘えっぱなしでいいのかな?」


「ぺるみ様は天族です。人間とは全く違う時の流れを生きるのです。それは……辛い事でもあります。愛しい者を喪っても苦しい時を生き続けなければいけないのです。そして、いつの間にかそれが当たり前になってしまう……」


「当たり前に?」


「はい。心が慣れてしまうのです。……いや、違いますね。平気だと思い込まなければ生き続けられないのです。あまりに辛い現実に耐えられないのです」


「……お兄ちゃん」


「近い未来に人間のご家族は旅立たれるでしょう……その時の……ぺるみ様が心配です。とても耐えられないのではないかと」


「うん。わたしもそう思ってね。距離を置こうとしたの。でもハデスに言われたの。喪ってから、もっとこうしておけばって後悔するのなら絶対に距離を置いたらダメだって」


「ハデス様が……そうですか。ハデス様は誰よりも別れの辛さを知っていますから……」


「うん」


 ルゥの身体に触れると冷たくて、申し訳なくて涙が溢れてくる。


「ぺるみ様……今の気持ちをずっと忘れないでください」


「……? お兄ちゃん?」


「あまりに長過ぎる時間に……生きる事に絶望を感じた時に……思い出して欲しいのです」


「……思い出す?」


「ぺるみ様は……決して一人ではないのだと。おばあ様もお兄様もぺるみ様を大切に想っているのですよ? ですが……一度傷ついた心にはヒビが入り、その傷からは血が流れ続けているのです」


「お兄ちゃん?」


「ぺるみ様は聖女様の時も、ルミ様の時も、心に大きな傷を負いました。他の者には耐えられる傷でも……命取りになるかもしれません」


「……また、辛い事があったら自ら命を絶つ……っていう事?」


「あまりに辛い事が多過ぎたのです。どうか、ご自身を大切にしてください。決して、一人で抱え込まないでください」


「……うん」


「これからはいつでも天族の翼で浮遊島に遊びに来てください」


「あぁ……翼……ね」


「ぺるみ様?」


「この翼は……飾りみたいな物だから……」


「え? 飾り? ですか?」


「うん。鳥が空を飛べるのは骨が空洞で身体が軽いからなの。翼がある魔族が飛べるのは小さい頃から飛ぶ練習をして、筋肉をつけているから。でも、天族は空間移動ができるからね。戦士でもないと飛ぶ必要がないんだよ。だから、飾りみたいな物なんだ」


「そうなのですか……では空間移動で遊びに来てください」


「……えっと、わたしは……空間移動もできなくて……」


「え? そうなのですか?」


「うん。お父様とお母様が身体が裂けたら危ないからって言って……やり方を教えてくれなくて……」


「ああ……なるほど……」


「ペルセポネ……」


 ハデスが部屋に入ってくる。


「ハデス?」


 顔が怖いよ?

 待って?

 この感じ、まさか?


「空間移動と空を飛ぶ鍛錬をしよう」


 ……!?

 空間移動と空を飛ぶ鍛錬!?

 練習じゃなくて鍛錬!?

 思い出される過去の鍛錬の島での地獄の時間……

 しかも、空間移動なんて失敗したら身体が裂けるんだよね!?

 

「えっと……しないとダメ?」


「簡単な鍛錬だ。そうだな……飛ぶ鍛錬は、後ろから一国を滅ぼせる程の炎で追われればすぐに飛べるようになる。空間移動は……最悪、身体が裂けてもシームルグに治させて……」


 いやいや、ハデス!?

 なんか怖い事を言い始めたよ!?

 これは、まずいね。

 大変な事になりそうだよ。

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