ずっとあった違和感(4)
(ジャック達の親世代より上はアカデミーに通えませんでしたからね。貧しい貴族がアカデミーに来られるようになったのはルゥ様のお兄様の代になってからです。親世代から受け継がれる嫌悪感も少なかったんでしょう)
ゴンザレスの言う通りかもしれないね。
じゃあ王都の近くで暮らしている下位貴族達からの高位貴族に対する憎悪はかなりの物なんだね。
(ぺるみ様の思う何倍も酷いはずです)
……そう。
(公開処刑の日には平民だけではなく地位の低い貴族もかなり高揚するはずです。人間を好きになったばかりのぺるみ様は……決して見てはいけません。今まで以上に人間を嫌いになり傷つくはずですから。確かに逃げているかもしれません。ですが……もう少しで人間と関わらなくなるぺるみ様がこの事で傷つく必要はありません。このまま綺麗な思い出だけで……それだけを思い出しながら永遠の時を過ごすのは悪い事なんでしょうか?)
ゴンザレス……
(これは強制ではありません。オレにはそんな権利はありませんから。ですが……オレは……ぺるみ様にはずっと笑っていて欲しいから。時には見て見ぬ振りをしないと……それが賢い生き方です。傷つかないように逃げる事も大切なんです)
……うん。
ありがとう。
こんなに心配してくれていたんだね。
(ぺるみ様は……不器用なくらい真っ直ぐですから)
不器用なくらい真っ直ぐ?
(ハデス様とそっくりです)
ハデスと?
(はい。優しいのに自分にも他人にも厳しいから誤解されがちですが本当はとても優しいんです)
えへへ。
ハデスを褒められると嬉しいよ。
(……怖いですけどね)
……それも分かるよ。
(今の悪口はハデス様には内緒ですよ?)
あはは!
悪口だったんだね。
(ぺるみ様?)
ん?
(オレは……)
うん?
(ぺるみ様が全魔族を幸せへと導いてくれるんじゃないかって思っていました。でも……それじゃダメなんですよね。自分でも頑張らないと。誰かに任せて自分は傍観しているなんて絶対にダメです)
ゴンザレス……
(オレ……族長に甘えっぱなしで。申し訳なくて)
……そっか。
(族長はおじいちゃんなんです)
ふふ。
そうだね。
(ゲイザー族はずっと逃げてきました。生き延びる為に……)
うん。
心を聞ける力を隠して生きてきたんだよね。
(これからもその力は隠し続けます)
それがいいね。
悪い誰かに利用されたら大変だよ。
(逃げる事で自分と大切な家族を守れるのなら……それでいいんです。だから……ぺるみ様も……ジギタリス公爵の処刑から逃げてください。日頃虐げられている人間が……いつもと違う姿に豹変するところを見てはいけません)
……ゴンザレス。




