ずっとあった違和感(2)
「先生……?」
「大国ほど身分制度は厳しいのです。昨日まで伯爵令嬢だった人を平民達が簡単に受け入れはしないでしょう。きっと生きているのが辛いほどの差別や暴力を受けるはずです。それが現実なのですよ。それに耐えられないのであれば今処刑された方が幸せなのです。貴族は平民から嫌われていますからね」
先生が厳しい顔をしているね。
「……助からない方が幸せなのかな?」
「伯爵令嬢として甘やかされ何不自由なく暮らしてきた人にとっては……耐えられないはずです」
「……そうだね。生きていて欲しいなんてわたしのわがままなのかな? きっと穏やかには暮らせない……」
「……あとは……本人次第です。強く……生きたいと願うのならば恥辱にも耐えられるでしょう」
「……うん」
これがこの世界の身分制度か。
伯爵令嬢は、その恥辱に耐えられるのかな?
生き延びたとしてもあの時処刑された方が良かったって思いながら暮らす事になるのかな?
「さあ、ペリドット様。黄金の国ニホンの皆様がいつものピクニックの場所にティーパーティーの準備をしてくださいました。外の空気を吸いながらおいしい物を食べて気分転換をしましょう。悲しいお顔はここまでです。数えるほどしかアカデミーに来られないのですよ? 楽しい思い出をたくさん作りましょう?」
「先生……うん。ありがとう」
もう、わたしにできる事は無いのかな。
あとは本人の気持ち次第なんだね。
……でも、なんだろう?
この違和感……
先生は学生をすごく大切にしているのに簡単に切り捨てるみたいに感じたよ。
(ぺるみ様……)
ゴンザレス?
(違和感……確かにぺるみ様にはそう思えるでしょうね)
……ゴンザレスには何か分かるの?
教えて欲しいよ。
(あまりに厳しい身分制度のせいでしょうね)
厳しい身分制度のせい?
(ルゥ様のお兄様とココ様は海賊として自由に育ってきました。だから、それほど高くない身分で虐げられ苦労してきた先生とは考え方が違うはずです)
考え方が違う?
(結局お兄様もココ様も王族でしたし、酷く虐げられたりはしませんでした)
二人はこの世界の厳しい身分制度を経験していない……?
(この世界の身分制度を無くすのはかなり大変なはずです)
苦労していない人間の戯れ言……?
(ぺるみ様……)
わたしも同じだね。
天界では神様の娘で、群馬のある世界では身分制度なんて無くて。
この世界ではずっと魔族に守られてきたんだよ。
だから……
身分制度で苦労していないから『身分制度を無くしたい。皆仲良く』なんて甘い事を言えるんだ。
(……ぺるみ様は……確かに甘いかもしれません。ですが、それがぺるみ様ですよ)
え?
(オレが大好きなぺるみ様は、そういうお方です)
ゴンザレス……
(それに苦労をしていないなんて違うでしょう? ぺるみ様はずっとずっと苦労して傷ついて……そんなぺるみ様だからこそ皆に優しくできるんです)
優しくできる?
(偉いわたしが助けてあげてるんだからありがたく思えとかそういうのではなく、困難を一緒に乗り越えてくれるのがぺるみ様でしょう?)
……そう……なのかな?
自分じゃよく分からないよ。




