ティーパーティーと小瓶(3)
「二人が無事で本当に良かった」
ベリアルとゴンザレスにお菓子を食べさせて本当に申し訳なかったよ。
「でも……ぺるみを一人にはしたくないな。オレとゴンザレスがいなくなったらこの人間と二人になるだろ?」
「それなら大丈夫だ。オレ達がいるからな。揉めてそうだから見に来たぞ?」
イフリート王子達が来てくれたね。
耳がいいから聞こえていたのかな?
「そうか? じゃあ口をゆすいだらすぐに戻ってくるからな」
こうして、皆がそれぞれのクラスルームに帰っていくと令嬢に話しかける。
「あなた……どこで魔素を手に入れたの?」
「……商人が訪ねてきて……まさか魔素だなんて思わなくて」
「それっていつの話?」
「今朝よ。他にも宝石とか置物とか……この小瓶はおまけでもらったの」
「おまけで? ふーん。小瓶が魔素で腐敗してきているね。そこから魔素が漏れてきたんだね。それで初めのうちはお菓子が傷んでいなかったのか」
「本当にわたしは何も知らなかったのよ。本当よ……」
「でも下剤だとは思っていたんだよね。だからティーパーティーに持ち込んで誰かに飲ませようとしたんでしょう?」
「それは……」
「はぁ……わたしに飲ませようとしたんだよね?」
「……!」
「全部分かっていたよ? お妃候補である三人に恥をかかせたかったんだよね。でも、ココちゃんとアンジェリカちゃんには隙がないからわたしを狙ったんでしょう?」
「……」
「あなた……残念だけどもう庇えないよ。魔素だと知らなかったとしてもその小瓶の中身は魔素だし、他国の王女であるわたしやココちゃんに危害を加えようとした。これは学生だからといって赦される事じゃないよ」
「……そんな……じゃあ……わたしは……」
「処刑……かな。家族もね」
「……! お父様とお母様も……?」
「それだけの罪を犯したんだよ」
「……わたしは……ちょっと……痛い目に遭わせようと……綺麗に産まれて身分も高くて……お妃候補で……羨ましくて……」
「取り返しのつかない事をしたね。他国の王族と聖獣と男爵令嬢への殺害未遂。もしかしたらこの場にいた全員が死んでいたかもしれないんだよ? 処刑を免れて生きていられるはずがないよね」
「……」
「あなた……さっきから一度も謝らないんだね」
「……え?」
「プライドばかり高くて自分勝手で周りから嫌われている事に気づきもしない。まだ自分が悪い事をしたっていう自覚がないの?」
「……あります。でも……魔素だと知らなかったから……」
「あなたのせいでシャムロックと黄金の国ニホンがリコリス王国に攻めてきたら……あなたはどうするつもりだったの?」
「……! でも……シャムロックもあなたの国も小国だから、大国のリコリスが負けるはずがないわ?」
「その戦で何百、何千もの命が失われるんだよ?」
「……そんなの……兵士が……やる事だから……それが仕事でしょ?」
「……あなたのせいで死ぬのが仕事なの?」
「……!」
「もう処刑は免れない。あなたはどうするべきなのかな?」
「……え?」
「スウィートちゃんはきちんと謝ったよ?」
「スウィート……? 公女の……?」
「うん。心から謝ってくれたよ? あなたは?」
「……結果……誰も死ななかったじゃない」
「……そうだね。あなた以外は死なないだろうね」
「処刑……されるから……?」
「違うよ。処刑じゃなくて魔素で死ぬの。それから、あなたの一族は公開処刑だろうね。でも……処刑で死んだ方が楽だろうけどね」
 




