商売上手の店主には気をつけて~その三~
「大口開けてって……そんな風に思っていたんだね。サンドイッチは、ちまちま食べるよりその方がおいしいんだよ?」
「そうだな。オレもそう思うぞ。でも……あいつにテーブルマナーを習ったのか……想像しただけで怖いな」
ベリアルはわたしがハデスから地獄のようなテーブルマナーの鍛錬をされていた事を知っていたんだね。
「……あれは恐ろしい鍛錬だったよ。魔法石で攻撃されない代わりにフォークが何度テーブルに刺さったか……」
「……失敗する度にフォークが飛んできたのか」
「フォークがテーブルに刺さるなんて見た事がなかったから身体が固まったよ……」
「あいつはそういう奴なんだ。当たるか当たらないかのギリギリを攻めてくるんだ」
「おかげで四大国の王様達にもテーブルマナーを褒められたんだけどね」
「まあ、ぺるみなら今回も上手くやるだろ。それで、オレはティーパーティーに行ってもいいのか?」
ん?
ティーパーティーに行きたいのかな?
「うーん……一応女の子限定らしいから……」
「でもぺるみが心配だな……」
「え? わたしの心配をしてくれているの!? ぐふふ」
「……そういうところが心配なんだよ。あ、今オレはリボンをしてるんだよな?」
「うん。超絶かわいい真っ白いリボンをしているよ。ぐふふ」
「よし。じゃあオレは女の子のヒヨコに見えるよな。あとは……ゴンザレスにも……なあ、ゴンザレスにちょうどいいリボンはあるか?」
ベリアルがベリス王子に話しかけているね。
でも、その話し方だと……
「はい。もちろんです。ゴンザレスには……そうですねぇ。海を連想させる青はいかがでしょう。こちらになります」
……ベリス王子は青いリボンを見せた後に箱に入れたね。
嫌な予感しかしないよ。
「うわあぁ! かわいい色だな。じゃあ、それをくれ。わざわざ箱に入れてくれたのか?」
あぁ……
パンみたいなかわいいおててで箱を開けちゃったよ。
「はい。開けましたね? ではお知り合い価格として金貨一枚で」
ほら出た!
そうなると思ったよ。
……お知り合い価格じゃなかったらいくらだったんだろうね?
「……!? 金貨!? え!? オレ金貨なんて……」
「残念ながら箱を開けてしまうと返品は不可でして……」
うわぁ……
クリームブリュレの時と同じ流れだよ。
「ええ!? どうしよう。オレ……金貨なんて持ってないよ!」
「……では身体で払っていただくしか……」
「身体で!? 何をさせるつもりだ!? まさか……お前も変態なのか?」
「ふふふ。簡単な事ですよ。リボンや、これから始める商売の宣伝のお手伝いをすればいいだけです」
「宣伝?」
「ただ商品を身につければいいだけですよ? ささ、こちらの書類にサインを……」
ベリス王子はいつの間に書類を作っていたんだろうね。
胸ポケットから普通に出したけど。
「うぅ……仕方ないな。うーん……上手く書けないよ」
「ははは。パンのような愛らしい翼ですからね」
「よし。できた。じゃあ、ゴンザレスにリボンを結んでやってくれ。オレの翼じゃ無理だからな」
「はい。それはサービスさせていただきますよ」
サービス?
本来なら有料っていう事?
どこまでも商売上手だね。
 




