お互いを想い過ぎてすれ違う事もあるよね(2)
「え? ぺるみ様?」
やっぱりグリフォン王は気づいていなかったんだね。
「わたしが見る王子のお母さんはいつも優しく微笑んでいるよ?」
「……え?」
「最近……お母さんの顔を見たのはいつかな?」
「毎日……会っていますが……」
「いつお母さんの顔を見た?」
「……顔を……? そういえば……」
「お母さんはずっと心配そうで……でもすごく優しい瞳で王子を見つめているよ」
「……優しい瞳?」
「お母さんは果物を探してきてくれた時と何も変わらないんじゃないかな?」
「……変わったのは……わたしの方……?」
「ピー……陽太お兄ちゃんのお母さんを見ていて思ったんだけどさ……」
「ヨウタ……?」
「ああ。ニホンの……お兄ちゃんみたいな人? お兄ちゃんの事が心配でつい口うるさくなっちゃうけど、それは大切だからなんだよね」
「大切だから口うるさくなる?」
「うん……わたしはまだ親になった事はないけど……将来を心配したり危険から守りたくて先回りして口うるさくなっちゃうんじゃないかな?」
「母上が……わたしを心配している? ……てっきり呆れているのかと」
「王子……わたし、思うんだ。一度ちゃんと話した方がいいよ」
「ちゃんと話す……?」
「わたしが見ていても辛いくらいだから……お母さんはもっと辛いはずだよ」
「母上が……辛い? わたしのせいで……」
「お母さんが王子に厳しくするのは王子が大切だからなんだよ?」
「呆れているからではないのですか?」
「お母さんの優しい瞳を見れば誰でも分かるよ? 絶対に呆れてなんていないよ」
「口に出してくれればいいのに……」
「大切な子が厳しい環境で王で居続ける為に、誰かが悪にならないといけないと思ったんじゃないかな?」
「どうして……ですか?」
「自分がいなくなって王子がひとりぼっちになっても生き残れるようにじゃないかな?」
「母上が……いなくなる?」
「強いからいつまでもずっと近くにいてくれるって思うよね。わたしも……おばあちゃんが生きている時は思っていたの。おばあちゃんはいつも強くてずっと生きていてくれるって……そんな事はあり得ないのに」
「……母上が……いなくなる……?」
「生きているうちしか感謝の気持ちは伝えられないからね。わたしも……もっともっと大好きだよって伝えれば良かったって後悔したの」
「母上はいなくなんてなりません……ずっとずっと強くてずっとずっとわたしを叱って……だから……」
「そこにいるのが当たり前で……いなくなる事を考えたりしなくて……だからいなくなった後に苦しくなるんだよ。もっともっと大切にできたはずなのにって」
「後悔……苦しくなる……?」
「一度お母さんにありがとうって言ってみたらどうかな? 本当はお母さんの事が大好きなんでしょう?」
「大好き……? わたしはもう赤ん坊ではないから……そんな事は言えないです」
「どうして? わたしは毎日言っているよ? 好きな気持ちを伝えるのに年齢なんて関係ないよ。お母さんにとっては王子はいつまでも息子でしょう?」
おばあちゃんも、お父さんをずっと心配していたからよく分かるよ。
年齢なんて関係ないんだよ。




