親の心子知らず……か
「ほら、王子達ももっと食え。ぺるみとベリアルは甘い物だけじゃなくてご飯も食え?」
おばあちゃんがベリアルの寝癖を直しながら話しているね。
水をつけても風の魔法石を使っても直らないんだね。
何をしてもピョコンって立っちゃうんだ。
今日はツインテールじゃないんだね。
でも……
ぐふふ。
かわいい。
ぐふふ。
かわいい。
「……ぺるみはぺるみだなぁ」
おばあちゃんが安心したような顔をしている?
わたしが変態だと安心するの?
「……? おばあちゃん?」
「そうだ……ベリアル、新商品のリボンなのですが、よろしければその愛らしい寝癖につけても?」
ベリアルの超絶かわいい寝癖にリボンを!?
ベリス王子は最高だよ!
「ん? オレがリボンをつけるのか? オレは男だぞ?」
「ははは。性別など関係ないのですよ。それぞれが好きな物を身につければ良いのです。それが個性なのですよ? 自分に似合う物を他人にとやかく言われる筋合いはありませんからね」
「個性? ふーん。そうなのか?」
「はい。では、ベリアルのクリーム色によく似合う白いリボンをつけましょう」
白いリボン?
おお……
見るからに高そうなリボンだね。
ベリス王子の店舗で売り出す新商品かな?
「うわあぁ! 超絶かわいいっ! 最高だよっ! あぁ……漂う赤ちゃん感……これでスタイがあれば……くぅぅ! 堪らないよっ」
興奮がとまらないよ!
ぐふふ。
「なんと……スタイ……これは思いつきませんでした。はぁ……まだまだ父上のようにはいきませんね」
「ん? ベリス王子はどうかしたの?」
「……いえ。父でしたらきっとスタイを用意していたはずです」
「王子よ……そうだな。だがそれだけでは足りない。おしゃぶりとガラガラ、ベビードレスもだ」
ベリス王……
いつの間にか来ていたんだね。
もちろんタダじゃないよね……
それを欲しがるわたしの姿を見たハデスに買わせるつもりなんだ。
ハデスは毎回金貨じゃなくて金塊で買っているからね。
いいカモだよ……
「……! わたしはまだまだです……もっと励まなければ……」
……ハデスから金塊をもらう為に?
恐ろしい親子だよ。
「王子よ……それだけではないぞ? 今言った物以外にもある。考えてみるのだ」
「今の物以外にも? ……おしゃぶりとガラガラ、ベビードレス以外に? うーん……ベリアルの愛らしさをさらに引き立てる物……ボンネットではリボンが隠れてしまうし……靴? でもベリアルは鳥の足だから……」
「今日一日かけてそれを考えるのだ」
「……! はい! 必ずや答えを見つけ出します!」
「今ある物だけでなく王子が新しく作り出すのでも良いのだ。期待しているぞ」
「父上……はい!」
ベリス王子は父親のベリス王を尊敬しているんだね。
期待されて嬉しいみたいだよ。
「王子……アカデミーはどうだ?」
「はい。人間の勉強に慣れるのに時間がかかりそうです」
ん?
イフリート王子も父親のイフリート王と話をしているね。
「そうか。焦らずとも良い。王子自身の目で世界を見るのだ。誰かから聞いた世界が全てだと思うな?」
「はい! 頑張ります!」
イフリート王子も父親を尊敬しているんだね。
瞳がキラキラ輝いているよ。
あれ?
グリフォン王が震えているね。
どうしたのかな?
あ……
お母さんが来ているのか。
父親のグリフォンのお兄ちゃんも来ているけど……
「は……母上……あの……」
「グリフォン王……いつも以上に震えていますね……寒いのですか?」
「え? あの……えっと……大丈夫です!」
昨晩、お母さんが前魔王を倒した事実を知ったからね……
「そうですか。人間の暮らしをよく見てくるのですよ? 種族王としてしっかりと……分かりますね?」
「はいっ! 命がけで見てきます!」
グリフォン王はお母さんの事がかなり怖いみたいだね。
でも……
お母さんは心配そうにしているよ。
誰の傘下にも入らない種族から狙われているんだから当然だよね。
ハデスがヴォジャノーイ王に厳しくしているのと同じなんだろうね。
種族王として生きるのは命がけだから……
生き続けられるように、嫌われる覚悟で厳しくしているんだ。
グリフォン王は怖がってお母さんの顔を見ていないから気づかないんだね。
「はぁ……グリフォン王は頑張ると空回りしますからね。落ち着いて対応するのですよ?」
「はい!」
頑張ると空回り?
だから魔王であるお父さんに勝負を挑んだんだね。
すぐに後悔していたけど。




