ヒヨコのベリアルの秘密(6)
「え? オレに食べやすいサイズ?」
ヒヨコちゃんのベリアルが首を傾げながら、ウェアウルフのお兄ちゃんに尋ねている。
くぅぅ!
かわい過ぎるよ!
ベリアルを国宝にしたいよ!
人間国宝……
いや、ヒヨコ国宝だよ!
「ベリアルはいつもおいしそうに食べるところがかわいいからな。今日はベリアルの好きなチョコパンもたくさんあるぞ?」
お兄ちゃんが優しく話しかけているね。
「……どうして? なんでオレなんかの為にそこまでしてくれるんだ?」
「そんなのは当たり前の事だ。ベリアルがわたしの家族だからだ。ベリアルはかわいい弟みたいだと思っていたんだ。でも、それは違ったな……」
「あ……イチゴを全部食べたから嫌いになったのか?」
「え? あははは! そんな事はない。ベリアル? わたしはぺるみ様の『お兄ちゃん』だ。だからぺるみ様の息子のベリアルはわたしの甥になるだろう? こんなにかわいい甥ができて嬉しいよ」
「ウェアウルフ……オレの事が嫌いじゃないのか?」
「……天界では酷い暮らしをしてきたのか? だがこの第三地区は違うぞ? すごく居心地がいい。己の欲の為に誰かを傷つける事は絶対に無い場所だ。ここにいる皆がベリアルを大切に想っている。だから、これからは安心して穏やかに暮らしていこう」
「安心して穏やかに?」
「そうだ。わたしは、父の跡を継ぎウェアウルフ王になったが、王には向いていなかった。その傷ついた心をここの人達に癒してもらったんだ。ベリアル……ここにはベリアルを傷つける悪い奴はいない。だからもう大丈夫だぞ? ベリアルをいじめる奴はわたしがやっつけてやるからな……と言ってもベリアルの方がわたしより遥かに強いがな」
「ウェアウルフ……ありがとう……って、あれ?」
かわいいなぁ。
つぶらな瞳が潤んでいるよ。
こっそり吸っても気づかれないよね?
「へへっ。かわいい! かわい過ぎるよぉ! スーハー」
「こらっ! ぺるみ! いつの間に抱き上げて吸ってるんだ!?」
「えへへ。堪らないね。最高だよ。ぐふふ。スーハー」
「うわあぁん! ウェアウルフ! ぺるみがいじめるよぉ! 助けて!」
「え? それは無理……だな」
お兄ちゃんが苦笑いをしているね。
ふふふ。
残念だったね。
わたしはベリアルをいじめているんじゃなくて愛でているんだよ。
スーハースーハー……
「ええ!? さっき助けてくれるって言ってたよな!?」
「ぺるみ様は、いじめているのではなく己の子への愛情表現をしているのだ。親子の愛を邪魔はできない」
さすが、お兄ちゃんだね。
その通りだよ。
スーハースーハー……
「はあ!? だから……オレはぺるみの子じゃないってばあぁぁぁ!」
「くぅぅ! 叫ぶ我が子も最高にかわいいよっ! スーハー」
堪らないね!
もっと吸っちゃおう!
スーハースーハー……
「だから違うって! そうだ! ハデスはオレが子だなんて嫌だろ!?」
くっ!
そうきたか。
ハデスが嫌がったらどうしよう。
ベリアルを、親の立場を利用して吸いまくる予定だったのに!
「ベリアルは親子間の婚姻についてどう思う?」
ん?
親子間の婚姻?
確か天族は許されているんだよね。
真剣な顔をして、ハデスはどうしたのかな?