幸せはそれぞれ違うんだね~前編~
「ん……? ペルセポネ……?」
ハデスが目覚めたみたいだね。
うさちゃんが闇の力で眠らせたなんて言ったらまたケンカになりそうだから黙っていよう。
うさちゃんは日課の貝殻拾いかな?
姿が見えないね。
「ハデスおはよう。疲れていたんだね」
「疲れていた……? いつの間にか眠っていたのか」
「アカデミーでずっとわたしを見守ってくれているから疲れているんだよ」
「……そうか? おかしいな……いつ眠ったのだ?」
「ふふ。今日は一日のんびりしたらどうかな?」
「それはダメだ。ペルセポネを守らなければ。愚かな魔族がペルセポネを狙……あ……いや……」
ハデスはわたしが傘下に入らない種族に狙われている事を知っていたんだね。
「……ハデス。わたし……知っているから」
「ペルセポネ……?」
「天族と魔族を争わせようとしている種族がわたしを狙っているんだよね」
「……知っていたのか」
「お父さんは知らないんだね」
「……すまない。危険な事に巻き込んでしまって……」
「ハデスでも……お父さんに話さない事があるんだね」
「話せば魔王様は冷静ではいられないだろう。また暴走したら大変な事になる」
「……うん。そうだね」
「必ず守る……必ず」
「ハデス……わたし……ずっとハデスに……じいじに鍛錬してもらっていたんだよ? 自分の力で頑張ってみたいの」
「自分の力で……?」
「じいじは、わたしが誰にも守ってもらえない状況になっても自力で乗り越えられるように厳しい鍛錬をしてきたでしょう?」
「ペルセポネ……」
「ハデスはわたしをすごく心配してくれているよね。それと……信じてくれている」
「……わたしは……そうだな。ペルセポネなら自分で乗り越えられると信じている。だが……心配なのだ」
「うん。えへへ。ありがとう」
「ありがとう?」
「信じてくれてありがとう」
「……ペルセポネ」
「わたし……ルゥだった時……ずっと魔族になりたかった。人間なのに魔族に育ててもらって……わたしは魔族しか知らなくて。毎日愛してもらって。だから、わたしは魔族が大好きなの。それから……ルゥのおばあ様とお兄様に出会って人間を少しずつ好きになって。それでもわたしは……人間にはなりきれなかった。わたしは……魔族にも人間にもなりきれずにモヤモヤしていたの」
「そうだったな……」
「でも、それはハデスもお父さんも同じだった」
「確かに……わたしは魔族の身体に憑依した天族だったし、魔王様は魔族の中にいたが異世界の人間だった」
「苦しかったのはわたしだけじゃないのに、一人で傷ついているみたいにしていたよ。……皆が色々な事に傷ついていたのに」
「それは違う。ペルセポネ……」
「わたし……誰の傘下にも入らない魔族達の話を聞いてみたいよ。皆の話を聞いて皆で前を向きたいよ」
「……簡単にはいかない相手だぞ?」
「今までもそうだったよ? ウェアウルフ族とグリフォン族が攻めてきた時も。ベリス王に騙されて血判をした時も。リヴァイアサン族がヴォジャノーイ王国に攻めてきた時も。他にも……いつも皆に力を貸してもらいながら前に進んできたの」
「そうだったな」
 




