ハデスとうさちゃん(1)
「ペルセポネ……? ぼーっとして大丈夫か?」
ハデスが心配そうに話しかけてきたね。
「うん。平気だよ?」
ゲイザー族長と心の中で話していたから、ぼーっとしているように見えたんだね。
「では、わたくしは帰りますね。グリフォン王、もう休んで明日に備えてください」
グリフォン王のお母さんも帰るんだね。
「はいっ! 母上」
これ以上ないくらいの良い返事だよ。
前魔王を倒した母親か。
怖くて逆らえないよね。
「じゃあ、わたし達ももう寝るか。ぺるみも早く寝るんだぞ」
ママとパパも帰るんだね。
でも、少しだけ……
今はハーピーちゃんもいないから……
「ママ。えへへ。抱っこして?」
「ぺるみは甘えん坊だな。いつまでも赤ん坊だ。ママのかわいいぺるみ」
ママが優しく抱きしめてくれたね。
「えへへ。ママ大好きだよ」
「わたしも大好きだぞ」
ママのフワフワの羽毛が気持ちいいよ。
「パパも抱っこして?」
今は、すごく甘えたい気分なんだ。
ハデスとゲイザー族長が教えてくれた話に心が痛むんだ。
「ぺるみは甘えん坊さんだね。パパもぺるみが大好きだよ」
三人で抱きしめ合うと心が温かくなるのを感じる。
さっきまでの辛かった心が穏やかになっていく。
……でも、パートナーを食べた魔族は今この瞬間も一人で苦しんでいるんだよね。
ママ達が家に帰っていくとガゼボにハデスと二人きりになる。
「うさぎは寝ているのか?」
いつもハデスと仲良くすると邪魔してくるから警戒しているんだね。
「うん。家のベットでぐっすりだよ。ふふ。ずっと起きていると疲れるみたい。冥界でも天界でもずっとウトウトしていたよね」
「そうだったな……」
「……ハデス」
「どうかしたか?」
「ありがとう」
「……? 何がだ?」
「魔族の皆を前魔王から助けてくれてありがとう」
「あれは前グリフォン王妃がやった事だ」
「ハデスは魔族の力で解決させたかったんだね」
「我らは天族だ。あの頃のわたしはヴォジャノーイ族の身体ではあったがな」
「わたし……あのね?」
「……話しにくい事か?」
「……自分ばかり幸せになって……すごく嫌な気持ちだよ」
「……? 何の話だ?」
「ハデスはパートナーを食べた魔族の話を知っている?」
「……ああ。聞いた話だがな。知りたいか?」
「うん……」
「わたしも詳しくは知らないのだ。わたしが種族王になる前に既に閉じこもっていたからな」
「閉じこもる……」
「防御膜を張り一人きりで閉じこもっているのだ。いや、違うな。パートナーの思い出と共に……か」
「……ハデス……そうだね。大切な思い出と暮らしているんだね」
「わたしには分かるのだ。その気持ちがな」
「ずっと……ペルセポネを想ってくれていたから?」
「ああ。そうだ」
「ありがとう……わたし……その魔族を……」
「島から出したいのか?」
「……分からなくなっちゃった」
「……?」
「島から出るのが本当に幸せなのかなって」
「魔王様は全ての種族が、どこかしらの傘下に入る事を望んでおられる。それは未来の種族王達の為でもある。今なら種族王が団結しているが未来は分からないからな」
「困ったら助けられるから……今しかないんだよね」
「ペルセポネ……?」
「気持ちって難しいね」




