ヒヨコのベリアルの秘密(5)
「え? イチゴ? 全部食べちゃったぞ?」
ヒヨコちゃんの姿のベリアルが慌て始める。
「え? いっぱいあったから、まだどこかにあるんじゃないかな?」
かなり大量にあったし。
「そこにあったの全部食べちゃったんだ。……ごめん。レンニュウが旨くて止まらなくて……どうしよう」
あぁ……
泣きそうになっているよ。
「ベリアル……気にしなくていいんだよ?」
ベリアルが喜ぶと思ってイチゴのケーキにしようとしたんだし。
チョコのケーキに変えても問題ないよ?
「でも……ずっと頑張って準備してきたのに……オレ、イチゴを探してくるよ!」
「ベリアル……おいで」
泣きそうなベリアルを抱きしめると、少し震えている。
「……殴るか? 悪い奴だって……嫌いになるか?」
まさか、天界でいつも殴られていたのかな?
「わたしがベリアルを嫌いになるはずがないよ? イチゴのケーキじゃなくて……そうだ、ベリアルのケーキにしようか?」
「オレケーキ? ……オレをケーキに乗せて食べるのか?」
「え? 確かにベリアルは食べちゃいたいくらいかわいいけど、違うよ? ベリアルの形のケーキを作るんだよ? すごくかわいいと思うんだよね。お父さんもきっと喜んでくれるはずだよ? だから、そんな悲しい顔をしないで?」
いつもの少し生意気なベリアルに戻って欲しいよ。
「オレの形のケーキを?」
「うん。わたし、絵を描くとなぜか暗闇にうごめく生き物になっちゃうけど、お菓子だけはそうならないんだよね。だからベリアルがモデルになってくれたら嬉しいな」
「ぺるみ……うん。オレ、動かないでいるから、頑張るから……」
「ありがとう。じゃあちょっと吸われてみようか? それから、撫で回して……ぐふふ」
「ぐふふ? ……それはモデルと関係あるのか?」
「え? わたしの趣味……かな?」
「……! こんな時に何ふざけてるんだよ!?」
「ぷっ! あははは! それだよ! ベリアルはそうでなくちゃ!」
「……? でも、オレのせいでイチゴが……」
「ベリアルがイチゴを食べてくれたおかげで、かわいいベリアルケーキを作れるんだよ? こんなに楽しい事はなかなかないよ? だって、ずっとベリアルを見つめても怒られないんだから」
「ぺるみ……お前……本当に……仕方ないな。今だけだからな!」
良かった。
ベリアルは、こうでなくちゃ。
「うん! しっかり堪能させてもらうよ! ぐふふ」
こうして、ベリアルの形の立体ケーキ作りが始まったんだけど……
身体は、まん丸で翼が生えているね。
スポンジを重ねた時に丸くなるように切って、間に刻んだチョコと生クリームを挟んで……
組み立てれば、よし。
ベリアルのまん丸ボディができたね。
翼は細長いパンみたいな形なんだよね。
……どうしてこの翼で飛べているんだろう?
今は深く考えないでおこう。
チョコを溶かして翼の形にして差し込もうかな?
でも、上手くいくかな?
「ぺるみ様、ベリアルの翼でお悩みですか? 今ちょうどいい大きさのパンが焼き上がりました」
前ウェアウルフ王のお兄ちゃんが小さいパンを二つ持ってきてくれたね。
「うわあぁ! ありがとう! ぴったりだよ」
さすが手先が器用なお兄ちゃんだね。
すごく綺麗なパンだよ。
「ベリアルのくちばしで食べるのにちょうどいいサイズのパンをたくさん作っておいて良かったです。普通のパンだと食べにくそうなので……」
お兄ちゃんは、いつもベリアルを気にかけてくれているんだよね。
ありがたいな。