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真実に心が痛くなる事もあるよね(3)

(それも初めの頃だけでした。知恵をつけた者達は我らの思い通りにはならなくなりました。そして……自分の無力さを痛感させられました)


 皆が仲良く暮らせる世界……

 それがこの世界の……

 初めからいた皆の『理』だったんだね。

 族長……

 辛かったね……

 

(ウラノス様の望んだ『魔族が人間を虐げる世界』は初めから存在しなかったのです。かわいいあの子にそんな事はさせられなかった。あの子はオレや『初めからいた者』の宝だったのです)


 愛していたんだね。


(愛……そうですね。あの子を見ていると穏やかで温かい気持ちになりました。ですが……人間は知恵をつけあの子を虐げ始めました。オレ達は人間を赦せませんでした)


 ……でも、その頃にはもう人間を思い通りに誘導できなくなっていたんだね。


(……はい。それに、人間を滅ぼせば魔族は食糧を失ってしまいますし、あの子の血を引く人間もかなり増えていましたから……)


 黙って見ている事しかできなかったんだね。


(我ら『初めからいた者』は己の無力さに心を痛めていました。そして、あの子の暮らす島に……ウラノス様が住むようになったのです)


 オケアノスが人間に襲われた後の事だね。


(はい。それから……あの子の心は壊れていきました)


 ……うん。


(わたしのかわいいあの子は……最期の時を迎えました。その直前あの子は闇の力を魔法石に入れました。そして小さなうさぎのような生き物が生み出されたのです。それからすぐあの子は亡くなり、わたし達『初めからいた者』は生きる意味を失いました)

 

 族長……


(ウラノス様はそれからもこの世界にとどまりました。そして天族からこの世界を守り続けました。ある時……我ら『初めからいた者』は気づいたのです。ウラノス様の中にあの子の闇の力がある事に。そうです。ウラノス様はいつか、あの子を蘇らせる為に魂を抜き取っていたのです)


 ……うん。


(我ら『初めからいた者』は静かにウラノス様を見守りました。息子を捨て……その息子を愛し……苦しみながらこの世界を守り続けるウラノス様を……)


 初めからいた皆はどんな気持ちだったの?


(初めは憎かった……何の罪もないあの子を捨てたウラノス様が。ですが……あの子が亡くなり……天族からこの世界を……魔族の姿でたった一人で守り続けるウラノス様の姿を見ると……胸が苦しくて……)


 そう……


(そんなある日、ウラノス様の中から闇の力が無くなっている事に気がつきました。もしかしたらあの子が入る身体が見つかったのかと思いました。ですが……なぜかうさぎのような生き物もいなくなりウラノス様だけが島に帰ってきたのです)


 強過ぎる闇の力が抑えきれなくなったからウラノスおじい様が天界にその力を封印したんだよね?

 うさちゃんは闇の力の近くで眠りについたって言っていたよ。


(そして、ウラノス様は突然姿を消しました。その時にはなぜだか分かりませんでしたが……)


 ……オケアノスの魂を持つわたしをファルズフから守る為?


(そのようですね。最近になり知りました……そして……かなりの年月が経ったある日……うさぎのような生き物が海に落ちてきたのです)


 わたしがファルズフに刺されたあの日の事だね。

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