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真実に心が痛くなる事もあるよね(2)

(ぺるみ様……はい。……オレ……ずっと一人で悩んできたから……話を聞いてもらえて心が軽くなりました) 


 族長……

 吉田のおじいちゃんとおばあちゃんに甘えてみたら?


(え? あの……)


 本当は『よく頑張った』って褒められたいよね。


(それは……)


 ゲイザー族の子孫を守る為に頑張ってきたんだよね。


(ですが……)


 おじいちゃんは甘えられるのが好きなんだよ?


(オレが甘えても……嫌がられませんか?)


 族長はおじいちゃんとおばあちゃんの事が大好きなんでしょう?

 

(……! あの……はい)


 ベリス族長の息子さんを好きだったリリーさんは、お別れの時に『好きだ』って伝えた事を後悔したのかな?


(え?)


『好きだ』って伝えなかった方が後悔したと思うよ?


(それは……)


 族長も伝えてみよう?


(あの……その話ですが……)


 え?

 リリーさんの話?


(あれ……ほぼ嘘ですよ? まぁ……オレの考えた嘘ですが……そこにさらにベリス王が嘘を足したようですね)


 ……族長が考えた嘘って?


(……薄々怪しいなとは思っていましたよね? と言ってもベリス王子が今話したのはベリス王から聞いた話なのですが……ベリス王子もこの話は嘘だと気づいています。王子は優しい子ですから気づかない振りをしていますが……)


 ベリス王が王子に嘘を教えたんだね……

 ベリス族らしいね。

 でも族長が考えた嘘ってどういう事?

 族長はベリス族がどうして人間相手に商売をしているかを知っているの?


(……はい。ベリス族は今ほどではありませんが元々嘘つきでした。今のように店舗を持って人間相手に商売を始めたのは今のベリス王になってからです)


 え?

 じゃあ……

 さっきのリリーさんとの思い出のせっけんの話は全部嘘なの!?


(はい。オレが心に囁いたのです)


 心に囁いた?

 どういう事?


(ベリス王はある事にかなり傷ついて……大切な存在を守る為に優しい嘘をつこうと考えていました。その嘘を……オレが手伝いました。遥か昔の真実を織り交ぜながら。もちろんオレだとは知られないように、ベリス王が自分で思いついたかのようにしました。ですが……銀の髪の少女の話を囁いた為にベリス王は洞窟の聖女の存在にたどり着いてしまいました)


 だから、ベリス王は聖女の棺を開けたんだね。

 それにしても、あのベリス王が傷ついていた?

 一体何があったの?


(……それは……オレからは言えません。ベリス王が何よりも隠したい真実をオレの口から言うのは絶対にダメですから)


 何よりも隠したい真実……?

 そっか……

 よほどの事があったんだね。


(……ああ。『リリーさん』は実在していましたよ?)


 え?

 そうなの?


(銀の髪に青い瞳のそれは美しい少女でした)


 それって……

 オケアノスの子孫?


(そのようですね)


 ……?

 どうかしたの?


(あぁ……あの子の美しい子孫達は……その美しさから幸せになった者もいれば不幸になった者もいます。聖女様達や、ルゥ様のお母上のように……オレはずっと見守ってきました)


 あの子……オケアノスの事だよね。

 ……!

 まさか……


(え?)


 あぁ……

 うん。

 

(……?)


 ずっと……

 見守ってくれていたんだね。

 上位精霊や初めからいた魔族の皆と一緒に。


(……この世界が始まった頃はまだ皆知能が低く人間と魔族は仲良く暮らしていました。ですが……食糧として創られた人間が知恵をつけると……そうもいかなくなりました。そして、食糧である人間とあの子が子を授かると……我ら『初めからいた者』は人間を食糧として考える事ができなくなりました)


 人間の中にオケアノスの血が混じったから?


(……はい)


 苦しんだんだね。

 上位精霊や族長は長過ぎる時を苦しみながら過ごしてきたんだね。


(……)


 この世界は……

 この世界に初めからいた皆が……


(……ぺるみ様?)


 皆がこの世界の理だったんだね。


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