真実に心が痛くなる事もあるよね(1)
「……リリーさんはベリス族長の息子さんを想っていたんだね」
そういえばベリス王が着ている服にはいつも花の形のブローチがついているけど……
「わたしも聞いた話ですからどこまでが真実かは分かりませんがね」
ベリス王子がいつもの作り笑いをしているね。
……今の話、お得意の嘘じゃないよね?
でも……
「ベリス王子? 今の話の内容からするとリリーさんは……」
「はい。……オケアノス様と人間との間に産まれた赤ん坊の子孫でしょうね」
「……うん」
「わたしは……いつか、父の花の形のブローチを受け継ぐつもりです」
「……え? それって?」
「あのブローチは……ベリス王だけが受け継げる物です。今の話が『事実』なら……髪飾りをブローチに作り替えたのでしょうね」
「……そうなんだね」
ベリス王はいつも高級そうな服を着ていて、同じ物を見た事がないのにブローチだけは毎日同じだから不思議だったんだよね。
ベリス族に代々伝わる宝物……か。
素敵だね。
「ベリス族はそれからずっと人間相手に商売をしています。せっけんだけは絶対に品切れにならないようにと代々言われ続けているのですよ?」
「リリーさんとの思い出のせっけん……か」
(所々事実もありますが騙されてはいけません……オレが考えた話と変えているじゃないか……)
え?
ゴンザレス?
あ、違うね。
ゲイザー族長だね。
ん?
何を変えているの?
(あぁ……いえ。魔王城から今の話を聞いていましたが……)
え?
そんな離れた場所から心の中に話しかけられるの?
(え? はい。できますよ?)
知らなかったんだけど!?
ゲイザー族同士がしているのは見ていたけど、わたしもできるの!?
(え? あ……はい?)
……?
何か隠しているね?
(……え? あ……いえ。あの……)
吉田のおじいちゃんに口止めされているの?
(……え? えっと……)
……ゲイザー族長……ごめん。
困らせちゃったね。
(あ……すみません……ぺるみ様……)
謝らないで?
話せない理由があるんだよね。
(ぺるみ様……)
話を変えよう?
(え?)
ベリス王子の話が嘘ってどういう事?
(……オレの事……怒らないのですか?)
族長にとって吉田のおじいちゃんは父親も同じなんだよ?
話したらダメだって言われたら話せないよね。
(父親……?)
だから族長は天族から容姿の違う子が産まれる理由を真剣に考えていたんだよね。
父親と母親が悲しんでいる心を知って助けたかったんだよね。
(……オレみたいな者が……そんな……偉いお二方が父親や母親なんて……あり得ません)
初代の神様が創ったこの世界に生み出された最初からいた存在なんだから神様の子と同じだよ。
ウラノスおじい様の子供なら妻であるガイアの子でもあるでしょう?
(……それは……ですが……オレは……)
きっと吉田のおじいちゃんもおばあちゃんも族長の気持ちに気づいているよ?
(……迷惑……ですよ……オレみたいな奴に……)
オレみたいな奴?
族長は素敵だよ?
(ぺるみ様……)
優しくて家族想いで穏やかで。
でも一人でずっと苦しんできたって知ってからは……
心配なんだ。
(心配?)
これからは……わたしじゃ頼りないだろうけど……苦しい事を話して欲しいな。
 




